糸満vs浦添商
美里工を破った浦添商ナイン、全力プレーで挑むも一歩及ばず
試合は直ぐに動いた。
初回、一死から国場大生がライトへ三塁打を放つと大城匠が初球のスクイズを成功させて浦添商が先制すると、糸満もその裏一死二塁から池間誉人の内野安打タイムリーで同点に追い付く。
糸満は3回裏、二死一・二塁から調子の良さを買われて打順が上がった砂川聖が、初球センター前に運ぶタイムリーですかさず逆転すると、4回にも二死二塁から遊ゴロ悪送球の間に1点を追加した。
だが美里工を延長15回の末に下した浦添商も黙ってはいない。5回表、二死満塁からの押し出し四球で1点を加えて試合を緊迫したものとした。
ただ、このうだるような暑さのせいなのだろうか。糸満・赤嶺祥吾と浦添商・天久太翔の両者ともにピリッとしない。
二人ともに60点の出来と言ったところだ。さらに準決勝という舞台も独特のプレッシャーを与える。
「バント処理を謝って二塁に投げてセーフにしてしまうところで、何を焦っているんだと」糸満・上原忠監督はエースと女房役の砂川に諭すように伝えた。
確かに序盤は周りが見えてなかった赤嶺だったが、アドバイス後は普段の自分を取り戻すように7回以降をヒット1本、打者10人で締めて1点を守り切り、3年振り4度目の決勝へ進出した。
敗れた浦添商だが、まだ2年生の天久がスタンドから拍手をもらう素晴らしいピッチングで糸満打線を十分苦しめれば、打線も5回までに4本のヒットを記録し好投手赤嶺を苦しめるなど、培ってきたその力を序盤から存分に出し切った全力プレーは、見ていて実に清々しいものでもあった。
最後まで見せた浦添商野球は、天久を初めとした後輩たちが、その思いとともにしかと受け取ったことだろう。
(文=當山雅通)