種子島vs霧島
心技体、人間の安定・種子島
出場各チームへのアンケートに「夏までに克服すべきこと」という項目がある。
「心技体の安定。特に人間の安定。自分自身をコントロールすること」
種子島のエース西田力人(3年)の課題はそう書かれていた。思い返せば昨秋の鹿児島実戦、今春の鹿児島工戦、いずれも先制点を挙げ、鹿工戦(2014年3月27日)に至ってはあわやコールドかというところまで追い詰めながら、制球難で自滅した悔しい過去があった。大事な夏の初戦は、先発して3イニングで無安打1四球6奪三振と成長の跡をみせた。
初回はボールが高めに浮き「自分で抑えてやろう」という力みが出た。無失点に抑えてブルペンに戻ってきたときは「手が震えていた」(日高慎一郎監督)という。
そこをしっかり修正できるようになったのが成長だ。抑えようと力むのではなく、周りを信じて打たせる。そう切り替えて、丁寧な投球ができたことが6奪三振にもつながった。「自分をしっかりコントロールできた」手応えを西田は感じることができた。
技術的には、身体の軸がぶれて安定したフォームで投げられなかったのを、下半身を鍛えて軸の移動だけで投げるフォームを徹底して身につけた。「心の安定」のために取り組んだのは「日々の生活の見直し」だ。地域の人にもあいさつする、決められた課題を期日までに提出する…日々の生活の中でおろそかにしていたことを大事にするようになった。「良いプレーがあっても調子に乗らない。悪いプレーがあっても引きずらずに切り替える」(日高監督)ことを日々の練習で心掛けた。
持ち味の打線は、上位から下位までムラなく球質の良い打球を放ち、バントを使うことなく14安打16得点と効率よく得点を重ねることができた。投手陣も西田、野手投手の宇辰大紀(3年)、アンダースローの鎌田貴久(3年)とつないで1失点で切り抜けた。チームの掲げる「全戦力で戦う」(日高監督)野球で初戦を突破できた。
2回戦の相手は昨秋に苦杯をなめた鹿実。「自分たちから崩れないこと」を日高監督は戦いのカギに挙げていた。
(文=政 純一郎)