試合レポート

明徳義塾vs済美

2014.06.10

「岸対安楽」好投手同士の熱投に会場どよめき、甲子園での直接対決を期待!

明徳義塾vs済美 | 高校野球ドットコム 

1年生ながら済美戦で好投した平石好伸(明徳義塾)

 曇天の[stadium]春野運動公園野球場[/stadium]、10時にプレイボールのサイレンが鳴るも、四国から頂点を見据える両エースの姿はマウンドには無かった。「明徳義塾戦は2イニング、高知戦で先発を考えている」(上甲正典監督)済美安樂智大投手(3年)はベンチ、明徳義塾岸潤一郎投手(3年・主将)の姿は右翼にあった。

 明徳義塾の先発マウンドに立ったのは188センチ76キロの1年生・平石好伸。ゆったりとしたフォームから落ち着いて長い左腕を振り下ろし、1回は4人で打ち取った。しかし2回以降は公式戦さながらの雰囲気に緊張したか、制球が乱れ始める。2回は先頭の1番・林幹也三塁手(3年)に四球を与え、一死二塁から3番・林賢人右翼手(3年)に右翼へ二塁打を浴びた。

 女房役の棈木裕亮捕手(3年)が何度も駆け寄り、「ええ球いってるから!」と鼓舞し、3年生内野陣も背中を押してくれた。結果、平石は2回と3分の1を投げ、投球数50、被安打2、四死球4。「いまはさすがにバテているね」(馬淵史郎監督)。ただ、春季四国大会での公式戦初登板からの続く緊張感を鑑みれば、まずまずの結果だった。

 代わりにマウンドへ立ったのはまたしても1年生だ。兵庫・龍野ボーイズ時代には最速141キロのストレートを投じる剛球右腕。加えて昨年、坊っちゃんスタジアムで開催された第14回鶴岡一人記念大会では関西ブロック選抜の右スラッガーとしてホームから99メートル先にある高さ5メートルのフェンスを越えてレフトスタンドに叩き込む快挙も演じた國光瑛人(177センチ73キロ)である。1対1同点の場面、無死一、二塁の場面で同級生からバトンを受け取った國光は「勝ち越されたら駄目だと思った。でも、プレッシャーは感じなかった。」と力強いピッチングを披露する。


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好守をみせた林幹也三塁手(済美)

 先頭打者の5番・浜中颯一塁手(2年)をアウトローコース直球で三振に抑えると、7回には5月の熊本RKK杯招待試合以降、守備の要である遊撃手に抜擢されている先頭の1年生8番打者・和田蓮次郎(右投右打・170センチ63キロ・高槻シニア出身)に対し、ファールボール5本と粘られるものの気持ちで負けることなく、最後はド真ん中へストレートを投げ込み三振を奪った。

 國光はこの日最速137キロをマーク。試合後、馬淵監督は「夏には絶対戦力になる。」と2人に期待を寄せている。特に國光には「良いフォークを持っている。今日は2回しか投げなかったけど」とコメント。「明徳義塾の若鷹」はまだ爪を隠しているようだ。

 一方、済美の2番手も輝いた。「昨日の練習試合で0対0だったので、今日は決着を付ける」と上甲監督から先発を託された山口和哉(3年)は、4安打無失点に封じた前日の練習試合に続き、最速137キロを計測したストレートと、大きく曲がるスライダーを武器に明徳義塾打線に斬り込む。ペースよく投げ込み、初球から積極的に振ってくる強力打線を封じた。

 課題の守備も落ち着いていた。2回には8番・棈木の難しい当たりを林が上手く処理。3回には福島弘樹二塁手(2年)が一塁寄りに守備位置を変え、50メートル走5秒8の1番・多田桐吾左翼手(3年)間一髪アウトに。4回には林が7番・尾﨑湧斗三塁手(3年)が放った頭上の当たりをジャンピングキャッチ。6回2失点と十分合格点の出来となった山口を支えた。

 そして終盤は真打登場。7回からは済美・安樂、8回からは明徳義塾・岸、それぞれ両校エースがマウンドへ。記者席のカメラが一斉に音を立て、両選手の注目度の高さがうかがえる。

「木曜から連投を意識した投げ込みをしています」と夏への調整段階としてこの招待試合を捉えている安楽は、カーブやスライダー等の変化球を多く使いながら難なく3人ずつで最後まで抑えた。ストレートで勝負に行く場面は少なかったものの、この試合では最速141キロを計測している。

 ただ岸は、この試合に違った意味を見出していた。先頭打者の2番・福島を内野ゴロに打ち取ったかのように見えたが、打球が三塁ベースに直撃、尾﨑の頭上へ跳ね上がる。後続・林賢人に犠打、宇都宮幹汰捕手(3年)にヒットを浴び、たちまち1アウト一・三塁。続く浜中をダブルプレーで打ち取らない限り、ネクストバッターサークルで待つ安樂との今日初めての直接対決になる。そして岸は浜中を歩かせ、安樂との直接対決を選んだ。


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力強いピッチングを披露した國光瑛人(明徳義塾)

 梅雨入りしたばかりにも関わらず、いつの間にか球場上空には青々とした大空が広がっていた。一死満塁、バッター安樂。試合後、岸は「この満塁の場面が一番楽しかった」と語った。

 強い精神力と度胸、器用さを兼ね備えた岸ならではの楽しみ方。フルカウントまで全球ストレート。両者譲らず次の1球は……外角低めの141キロ。空振り三振。岸はマウンド上でガッツポーズを握り百獣の王になったかのように力いっぱい吠えた。クールな岸が叫ぶ声と共に球場中がどよめきに包まれた。

 試合は高校通算21本塁打まで数字を伸ばしている4番・岸の2打点により、明徳義塾が勝利。ただ、この試合最大のトピックは間違いなくこのシーンだった。

 確かに両校5安打と派手な試合では無かった。しかし馬淵史郎監督は「打てずに勝てるのは投手中心に守りがしっかりしているから」と選手達を褒め、「今は打てなくてもいい。夏までには必ずスカッと勝てるチームになる」とほほ笑む。

 対する上甲監督も「安樂はアドレナリンが出たら体も動くタイプだから」と、「安樂vs岸」の対決を夏への起爆剤にしたい考えを示唆する。当の安樂も「まさか全部ストレートで来るとは思わなかった」と驚きながら、その顔は満面の笑みだった。

 ちなみに両者の今シーズン四国内での最後の対決は7月6日に[stadium]済美球技場[/stadium]でおこなわれる。その次の対決を甲子園で作るために。四国だけでなく全国からも注目を集めるライバルは妥協を許さぬ追い込み練習に入っていく。

(文=編集部 写真=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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