大島vs鹿児島工
「らしさ」取り戻す・大島
先発した2年生右腕・前山優樹(大島)
鹿児島大島は5回、2番・武田 翔吾(3年)のセンター前タイムリーで2点を先取。7回には一死満塁から4番・小野 浩之介(3年)の走者一掃三塁打が飛び出すなどで一挙5点を加えて突き放した。
投げては先発のエース前山 優樹(2年)が鹿児島工打線を1失点に抑える好投でリズムを作り、最後は1年生左腕の渡 秀太が2イニングを3人ずつで片づけて、昨秋の県大会以来となる公式戦の白星を手にした。
鹿児島大島がようやく今年初の公式戦白星を手にした。さかのぼれば昨年10月2日の県大会準々決勝の樟南戦で劇的な勝利を収めて以降、約8カ月、公式戦で勝てなくて「勝ち方を忘れかけていた」(渡邉 恵尋監督)が、ようやく復調のきっかけをつかんだ。
先発の2年生右腕・前山の好投が大きな原動力になった。
フォームを横手投げに変えてから「ボールの動きがより大きくなって打たれにくくなった」と自信をつけた前山は、「絶対に勝たないといけない」強い気持ちでマウンドに上がった。
立ち上がりから3回を除いて毎回走者を出し、得点圏に走者を背負う苦しい場面が続いたが、要所を締めた。
4回一死一三塁のピンチでは、好フィールディングでスクイズを自ら阻止。前山が粘投したことで、守備もリズムよく守れて、盛り上げることができた。
勝利を喜ぶ大島ナイン
バント失敗、走塁ミス、三振、エラー…この試合でもミスはあった。これまでと違うのは、ミスを「引きずらなかった」(重原 龍成主将・3年)。
3回、重原主将は二塁から本塁を狙ってアウトになった。5回も同じように二塁にいて、浅い当たりで「少し迷った」が思い切って本塁に突入。2点目のホームを踏んでいる。
この積極性が「鹿児島大島らしさ」だ。
大会前から「昨秋を思い出す」(重原主将)ことにもこだわった。
甲子園、九州、南日本招待は全員で髪を3分にしていたが、昨秋と同じ5厘にした。
「負ける要素を作らない」(重原主将)ために、試合の入り方や、宿所での生活なども見直した。
ミスはあっても気持ちを切り替え、自分たちらしい野球を貫けたことで自信を取り戻した。
「これで波に乗って、夏までどんどん調子を上げていきたい」と前山は言う。
準々決勝の相手は奇しくも樟南。甲子園以降苦しんだ分、成長した成果を試す絶好の相手だ。
(文=政 純一郎)