試合レポート

広島新庄vs東海大三

2014.03.25

13K完封への流れを作った初回の1点

 9回裏、最後の打者を三振に仕留め、初出場の甲子園で見事完封を果たした広島新庄のエース・山岡就也(3年)。指名選手としてお立ち台に呼ばれても、淡々とした口調で投球を振り返った。
 「(完封できて)良かったです。今日は、腕は振れていたのですが、球速が出ていなかったので調子は良くないと思っていた。(採点は)80点から90点くらいです」。

 初回の先頭打者から2回にかけて四者連続で三振を奪うなど、東海大三打線を翻弄した左腕。点差が開いた後半はスタイルを変え、省エネで投げ終えることを望んだ。最終的には三振を13個奪い、被安打はわずかに2。
 東海大三の藤井浩二監督は、「力で来るピッチャーに、力で振りにいってしまい、バットが出なかった。序盤にチャンスが作れなかったのが敗因です」と完敗の気持ちを話した。

 山岡の快投を引きだしたのが、初回に挙げた1点である。
 先攻の広島新庄は、1番の中林航輝(3年)が、フルカウントと粘って、8球目をレフト前へと運んだ。主将が試合開始直後に放ったヒットに、ベンチは勢いづく。

 だが、続く2番田中琢也(3年)は、緊張が打席に向かう足取りににじみ出ていた。
 中林と同様、ファウルで粘ってフルカウントとなった後の7球目。走者の中林はスタートを切った。マウンドの東海大三エース・高井ジュリアン(3年)が投じた球は、内角高めの完全なるボール球。しかし、田中琢は緊張から冷静な判断ができなくなっていた。見送れば四球となり、チャンスが広がるにも関わらず、ボール球に手を出して三振。四球ではなくなり、中林が二塁タッチプレーでかろうじてセーフになったが、ダブルプレーを取られてもおかしくなかった。
 「来た瞬間にボール球とわかったが、逃げることもできずに振ってしまった」と悔いる田中琢。普段は緊張するタイプではないらしく、チームメートを盛り上げて、緊張をほぐすことが多いそうだ。
 「みんなにも硬いと言われた。(迫田守昭)監督からも、あんなボールを振るようじゃだめだ」と指摘されたという。それでも、中林が二塁で生き残ったことが幸いだった。

 


 次の3番西島晴人(3年)のファーストゴロで二死三塁と場面が進む。そして4番阪垣和也(3年)は、中林、田中琢と同様に高井に球数を投げさせて、フルカウントから四球を選んだ。

 一、三塁となって、打席は5番奥田慎梧(3年)。中林から阪垣までの四人のバッターに対する高井の投球を見て、「自分たちのスイングができれば、いける(打てる)ピッチャー」と感じていた。そして、阪垣が高井に7球も投げさせたことを利用して、「初球」に狙いを定めた。
 その初球、高めに浮いた変化球を逃さずに振ると、打球は三遊間を破り、先制のタイムリーとなった。

 「(流れが悪かったので)何とか1点をという気持ちだった。広島新庄で初めての1点というのは、一塁ベースを踏んで感じました」と奥田。
 そしてもう一人誰よりも喜んだのが、ボール球を振って三振をしてしまった田中琢だ。
 「1点を取ってもらって、本当に良かった」と、打席に立った緊張が徐々にやわらぎはじめてきた。

 この初回の1点が勝負のポイント。エース山岡の奪三振ショーへとゲームは進む。

 ただ山岡自身は、「三振は狙っていなかった」とも話す。自分は緊張するタイプではないそうで、この日もいつも通りだったそうだが、チームも初出場であり、田中琢のように緊張をする選手が多かった。できれば、最初から打たせて取って、守りのリズムを整えるピッチングをしたかったのかもしれない。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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