豊川vs中京大中京
田中空良投手(豊川)
最高の準備で勝利をつかんだ豊川
準決勝までの3試合では攻守にわたり盤石の戦いを見せてきた中京大中京。
しかし準決勝は打線が沈黙。安定していた投手陣も大量失点を喫した。10対0で6回コールドゲーム。試合時間わずか1時間25分で中京大中京は敗者となった。
豊川は強豪を退け2年連続の決勝進出、東海大会出場を決めた。
中京大中京打線の傾向を分析し、投球の組み立てをインプットしていた豊川の田中空良投手と捕手・氷見泰介主将。初球から積極的に振ってくる相手に対し、ストライクゾーンから曲がるスライダーで打ち気をそらした。
一巡目の9人に対し田中は奪三振3、一度も外野へボール運ばせない完璧な立ち上がりを見せた。第2打席に一番・山本源がスライダーを狙っていると感じた豊川バッテリーは、インコースの直球主体の配球に変え、最後まで無失点に抑えた。
「研究通りに田中がよく投げてくれた。きょうは100点」と称える豊川の今井陽一監督。
田中投手をリードした氷見主将は「試合前のブルペンから田中は気持ちが入っていた」とエースが最高の仕上がりで大一番に挑んでいるのをミットからも感じていた。
豊川は打撃でも前日の反省点を修正して試合に臨んでいた。
「早い球を打つ練習ばかりしてきたので、緩い球に対して突っ込みぎみになっていた」と話す今井監督。球をしっかり呼び込んで身体の軸で打つという指示を出し、好投手が揃う中京大中京の投手陣に挑んだ。
右中間にHRを放った武市(豊川)
中京大中京・先発は一年生の上野翔太朗投手。正捕手の伊藤寛士と1年生バッテリーを組み準決勝に臨んだが厳しい試練が待っていた。
2回一死から豊川の5番・山田洸太朗への初球が高めに入り痛打された。
「相手投手は変化球をコントロール出来ていなかった。真っ直ぐでカウントを取りにくると思ったので狙っていた」と振り返る山田の打球は、91.4mのライトポールの近くへ飛び込む先制本塁打。中京大中京の上野は3回にもバント処理のミスで痛恨の2点目を許した。
「送球ミスで上野の表情が固くなっていた。1年生バッテリーをもう少し支えてあげないといけなかった」と小林満平主将は相手に勢い付かせてしまったこと悔やんだ。
徐々に配球が単調になってきた中京大中京のバッテリーは、4回に豊川の6番・武市啓志選手に右中間へ運ばれるソロ本塁打を浴びると、その後も2本の適時打でリードを広げられた。
「相手がストレートを狙っていることに気が付いて、変化球でかわそうとしたがうまくいかなかった」と反省する伊藤捕手。
4回途中からリリーフした中村健人投手、さらに3番手でマウンドに立ったエース粕谷太基投手も打ち込まれ、ついに6回、試合を終わらせる10点目を許した。
中京大中京の高橋源一郎監督「この試合でキャッチャーの伊藤には多くを学んでもらいたい。打撃陣も良いピッチャーに対応するスイングが出来るよう一週間で修正してきたい」と3位決定戦からの巻き返しを宣言した。
(文=加藤千勝)