試合レポート

大阪桐蔭vs日川

2013.08.14

三枝龍史の投球が日川ナインに勇気を与えた

 お互い3本塁打を放った大阪桐蔭(大阪)と日川(山梨)の対決。日川の健闘が大きく光った試合だった。夏2連覇を狙う大阪桐蔭に対し、これほどの健闘。この試合を振り返っていきたいと思う。

 先制したのは日川であった。2回表、4番の山形が大阪桐蔭の先発・葛川 知哉(3年)からライトの頭を越える長打を放ち、無死二塁のチャンスを作る。一死三塁となって、6番佐野 拓也(3年)がスクイズを決めて、1点を先制する。

 日川の先発はエースの山田 基樹(3年)ではなく、三枝 龍史(3年)。169センチ65キロとそれほど上背はない。だが常時130キロ前後の直球、120キロ前後のフォーク。このフォークが鋭い落ちを見せる。あの森 友哉(3年)をフォークで空振り三振に打ち取るのだから、相当捉えづらい変化なのかもしれない。よく見るとこの投手、ストレートとフォークの腕の振りの変化がなく、出所が見にくい。大阪桐蔭打線が苦しむわけである。

 三枝はストレートとフォークのコンビネーションで、大阪桐蔭打線を苦しめる。4イニングまで4奪三振。3番森 友哉(3年)、4番近田 拓矢 (3 年)、5番香月 一也(2年)からひとりずつ三振を取っている。

 ピンチを迎えたのは5回裏、一死から7番福森 大翔(3年)の左前安打、8番水谷 友生也(3年)がエンドラン。フォークに喰らいつき、右前安打で一死一、三塁のチャンスを作る。9番葛川が四球で一死満塁のチャンスを作るが、1番峯本 匠(2年)が三ゴロ併殺に倒れ、無得点で切り抜ける。

 6回裏、大阪桐蔭は2番高木の四球、3番森の四球で無死一、二塁になったところで投手交代。ライトに入っていた山田を投入する。三枝投手、良く投げ切った。三枝の好投が日川ナインに大きな勇気を与えたはずだ。


 近田は死球で無死満塁となり、5番香月には二ゴロ。ただ打球がはねてしまい、セカンドがボールを後逸。記録は失策となり、2対1の逆転。7回裏、一死一、三塁で2番高木 俊希(3年)が遊撃内野安打。1点を追加し、3対1へ。一死一、二塁で森を迎えた。ストレート、スライダーで2ストライク1ボールに追い込み、最後はフォークで空振り三振。日川投手陣。なんと森からフォークで2奪三振に奪った。近田もフォークで空振り三振に打ち取る。ここで山田が吠える。

 山田。この2人だけギアの入れ方が凄い。2人以外は140キロ前後だが、この2人になると140キロ中盤。全力で腕が振れているので、フォークも落ちる。森を打ちとった時のフォークの落差は素晴らしかった。山田はフォーム的に馬力の強さを生かした投手。箕島戦では抑え気味だったが、リリーフになってからは全快の投球で、最速145キロを計測。肘の高さも前よりも頭に近い位置で放っており、強く縦で振れていた。まだ型がはまっていない投手だが、それが常にベストのフォームで投げ続けられることができれば、化ける予感がする。

 8回表、8番寺本 駿也(3年)が追い上げられるが、1番佐野 優吾(3年)の二ゴロで一死三塁として、2番水上 凱人(3年)の中前安打で1点を返し、3対2の1点差。そして9回表、先頭の山田。内角直球を投じ詰まりながらも右前安打を放ち、無死から走者が出る。6番佐野拓も続き、無死一、二塁のチャンスを作る。ここで三盗を仕掛け、一死二塁。斉藤 丞(3年)が三振に倒れ、二死。8番山本 悠雅(3年)の二ゴロ。これをセカンドがファンブル。佐野がこれを逃さなかった。ホームを狙い、セカンドが全力でバックホームするが、送球が間に合わず、3対3の同点に追いつく。日川の健闘に甲子園中が大きく湧く。まるで日川を後押しするように。だがあと1本が出ず。試合は今大会初の延長戦となり、10回裏、大阪桐蔭は一死から5番香月の死球で、一死一塁となって6番笠松 悠哉(3年)の場面でエンドランを敢行。笠松は内角直球を振りぬき、右前安打で一死一、三塁。7番福森がサヨナラ右前安打。大阪桐蔭が激戦を制し、3回戦進出を果たした。

 日川は素晴らしい戦いぶりであった。攻撃面では葛川をしっかり追いつめ、投手陣では三枝、山田の両投手がしっかりと持ち味を出していた。特に三枝の投球が日川ナインに勇気を与えた。ここまで堂々とした戦いが出来たのは彼の好投に尽きる。エラーで失点を重ねてしまったのは今後の甲子園で勝つための課題となると思うが、また次に甲子園に出てくるときは全国制覇を狙える日川となって甲子園に戻ってくることを期待したい。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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