作新学院vs桜井
作新学院が経験値の違いを見せる
3年連続の作新学院(栃木)。初出場の奈良桜井(奈良)。経験値の違いが大きな差になった試合展開であった。
まず先攻は作新学院。実は2011年の夏の初戦、2012年の夏の初戦ともに作新学院は先攻。先手必勝で試合序盤から自分たちの流れを作る狙いだろう。後攻の奈良桜井のマウンドに登ったのはエース・竹野 康平(3年)だ。実際に彼の投球を目にすると彼のような投手がいるのはとても心強いだろう。左スリークォーター気味から130キロ~135キロ前後の速球、横に鋭く曲がるスライダー、100キロ前後のカーブ。外角へ厳しいゾーンへ投げ込んでいる。それなりに球種は揃っていて、左腕投手としての球速はまずまず出ており、簡単に打ち崩せない投手と感じた。
だがナインの動きが硬い。平常心を身上とする奈良桜井だが、やはり初出場のチームが甲子園初舞台でいつもどおりでプレーするのは難しかった。初回は二死二塁から4番中村 幸一郎(2年)のライトオーバーの二塁打で1点を先制。そして江俣 悠亮(3年)の遊ゴロをショートが悪送球。二塁走者が生還し、2点目を入れる。さらに3回表は二死二、三塁のチャンスを作り、5番江俣の失策で1点を追加、8番鈴木 将治(3年)の四球で二死満塁のチャンスを作り、7番川上 修吾(3年)の右前適時打でさらに2点を追加し、5対0とすると、4回表には2番添田 真海(1年)の犠飛で1点を追加し、6対0とする。
やはり3年連続で甲子園の雰囲気を知っている作新学院は場馴れしている印象を受けた。ちょっとしたミスが重なり、ここぞという時に点を取られ、3回まで5点のビハインド。
だが4回裏、奈良桜井は3番岡田 悠平(3年)、4番横山 友亮(1年)の中前安打で無死一、二塁のチャンスを作ると、5番木下 恭仁(3年)はスライダーを巻き込んで振りぬいた打球はレフトスタンドへ。3ランホームランで、6対3の3点差に迫る。ここまではよく戦っていた。
だが作新学院打線は勢いが止まらず、合計15安打で17得点の猛攻。ミスも絡んでしまった。これが奈良桜井の本来の野球ではないと思うが、平常心の野球で相手を追い詰めてミスをつきながら勝ち上がっていたが、この試合は先手必勝の作新学院のスタイルにはまってしまった形となった。
そして最後のイニングでは代打攻勢。ベンチ入り18人を使い切り、奈良桜井の夏が終わった。大敗したとはいえ、念願の初出場を果たし、ベンチ入り全員が甲子園の舞台で実際に戦うことが出来てよかったと思う。
勝利した作新学院。正捕手の山下 勇斗(3年)が中心。見ていて風格を感じる捕手だ。キャッチングも実に上手く、的が大きく、投手からすれば投げやすく、ミットは動かずに捕球するので、審判からも見やすいキャッチングができる選手。彼の存在が3年連続出場の原動力担っているのは間違いない。
他では思い切り巻き込む打撃で、鋭い打球を連発した1番の小林 勇介(3年)は身体能力が高く、今後の成長に期待したい大型外野手。そして6回以降にリリーフで登場した朝山 広憲(1年)は常時135キロ前後の速球、スライダーで4イニング2失点に抑える好投を見せていた。
(文=河嶋 宗一)