日川vs箕島

　エースが中心に守り勝ち、守備から流れをつくり、打線につなげていくチーム。実際に見てみると日川の強く振る姿勢が勝ちにつながったゲームであった。

この試合の注目は日川のエース・山田 基樹（3年）。194センチの長身から角度ある速球と縦の変化球を武器にする投手。パワーピッチをする投手と思っていたが、実際に見てみるとなかなか丁寧な投球をする投手であった。右オーバーから投げ込む直球は常時135キロ～140キロ前後(最速143キロ)を計測。最速146キロを計測するといわれるが、この試合はやや控え目だ。変化球は縦スライダー、フォーク、スライダーを中心に投げ分ける。前半はストレートで追い込みながら、縦の変化球で打ち取るパターンで箕島打線を抑え込む。彼がどのような投手像を描いているかはわからないが、日本人投手よりも外国人投手のようなメカニズムを学んで、変則的な投手として確立していいと思う。

　須佐見 将馬は正統派な投手。西武で活躍する岡本洋介を彷彿とさせるような下半身を沈み込んだ投球フォームから常時135キロ前後の速球、スライダー、チェンジアップ、カーブを投げ分ける。両サイドへ投げ分けながる。135キロ前後だが、筋はなかなか良い。箕島といえば、東尾修、吉井理人を輩出した名投手輩出の学校。吉井投手の現役時代は非常にテクニックが優れた投手で、今も豊富な知識で、理論派な解説者として活躍しているが、彼も感性が優れた好投手となっていくのではないだろうか。その須佐見だが、計算外れのことが起きてしまう。

　1回表、日川は3番山田。一発を期待出来る打者として警戒したいところ。箕島バッテリーは外角へ甘いゾーンに入ってしまった。普通の打者ならばヒットで済むかもしれない。ただ194センチを誇る長いリーチがあり、さらに1本塁打を打っているパワーのある山田にとっては絶好球。思い切って巻き込んだ打球はレフトスタンドへ消える一打となった。そして4回表、4番山形 勝一（3年）が真ん中高めに入る直球を逃さず左中間へ飛び込む本塁打。失投ではあるが、それを見逃さず、本塁打にできる山形の長打力は素晴らしい。中村紀洋のようなリズムの取り方で豪快なフォロスルーで捉える打者。スイング軌道も綺麗な回転ができており、無駄がない。こんなポテンシャルの打者が全国に出てきらめくのが甲子園の良さである。そして5回表には主将の広瀬 克弥(3年）が内角直球を捉えてレフトスタンドへ。この一打が一番応えただろう。広瀬は明らかにインコースを張っての打ち方であった。配球を読まれたのは悔しい限りであろう。

　対する箕島も5回裏に村田 卓海（3年）が左中間を破る二塁打を放つと、8番須佐見が犠打で一死三塁となって、9番権城 秀胤（3年）が犠飛を放つ。この当たり、右中間を抜けそうな当たりであったが、中堅の佐野 拓也（3年）が執念の捕球で犠飛にとどめた。もし抜けていればわからない当たりであった。箕島はさらに畳み掛け、1番森下 雄斗（3年）が右中間を破る三塁打で二死三塁のチャンスをつくり、バッテリーミスで生還する。

　6回表、日川は一死から4番山形が痛烈な左前安打で出塁。山形は捕手の一塁牽制の暴投の間に二塁へ進み、さらに山形は三盗。これに焦ったのか、送球は暴投となってしまい山形が生還し、4対2とする。

　2点のリードを山田が守りきり完投勝利。日川が全国初勝利を果たした。両投手が持ち味を発揮しての投手戦となったが、日川のフルスイングする姿勢が勝利を呼び込んだ。ちょっとしたコントロールミスを本塁打にするには技術はもちろんだが、何よりも三振を恐れずにフルスイングすることである。本塁打を放った広瀬、山田、山形。これほど振れる選手が揃っているのは怖い。次の相手は大阪桐蔭だが、大阪桐蔭の投手陣相手にもしっかりと対抗出来る打力は備わっているのではないだろうか。

　今日のような果敢な攻撃をぜひ発揮してほしい。

(文=河嶋 宗一)