日大三vs都立日野
「とてつもなく厚い壁」に挑んだ日野だったが、またも日大三の前に涙
一昨年夏には全国制覇を果たし、3年連続出場を目指す西東京の雄というよりも、東京を代表する名門の日大三。これに立ち向かう日野は、悲願の甲子園初出場を目指す都立の雄だ。
ことに、近年はもっとも安定した実績を残している都立校ということでも注目されている。しかし、昨夏の準々決勝を含めて、何度も日大三の壁に泣かされ続けてきた。嶋田雅之監督は、
「毎年夏は、日大三と当たるところで位置が決まってしまっています。それだけに、日大三を倒すためだけにやってきた」とさえ言い切るくらいに、打倒日大三への思いはすさまじいものがある。
そんな試合を見ようと、観客の足もよく、試合開始1時間以上も前から多くの人が集まりはじめ、プレーボール時には外野もほぼ満員状態といっていい3万人の観衆で埋まっていた。改めて、高校野球への注目度の高さを感じさせる現象でもあった。全国制覇の実績もある私学の強豪対さまざまなハンデを乗り越えて来ている都立の雄という対決構図も、見る人の興味を刺激したのであろう。
そんな試合は、日野が王者日大三に対してどこまで食い下がることが出来るのか、はたまた悲願達成なるのかということに注目が集まった。
初回、日大三は先頭の河津君が右前打すると、すかさず送り内野ゴロで二死三塁。
ここで佐々木君が左翼線に二塁打してあっさり先制。それでも、日野もその後、さらに広がりかかったピンチは池田君が踏ん張った。
「日大三の打線相手にして、無傷で終わるということは考えられないけれども、どこかで一度ゼロを作っておかないといけない」と、考えていた嶋田監督だったが、その0点が2回に訪れ、その裏には日野も長田君がチーム初安打を放つなど、対等の戦いになって郁の多ではないかという気配は十分だった。
しかし、やはり日大三。早い段階で相手を突き放した。3回には四死球で一死一、二塁として5番太田君が右前へタイムリーを放ち、さらに五十嵐君も三遊間を破るタイムリー打に、8番湯本君の犠飛もあってこの回3点。試合は、日大三のペースとなった。
反撃に出たい日野だったが、3、4、5回と三者凡退で抑えられ、6回にやっとこの日2本目の安打を9番邦山君が放ったものの、後続は抑えられ、大場君の好投の前に二塁ベースへ届くこともなく、0が続いて気がついたら9回になっていた。
日大三は3番森君のあわやホームランかという大きな犠牲飛球でさらに1点追加しており、余裕の守りとなって、この回も大場君が3人でピシャリと抑えた。打者29人、残塁2、日野はほとんど好機すらつくることが出来なかった。
結果的には、日大三は快勝という内容で、3年連続16回目の甲子園出場を果たした。
今大会、ほとんど危なげないかのように勝ち上がっていった日大三だったが、
「大会では点差が開く試合も多かったものですから、安定した戦いだったと思われるかもしれませんが、苦しい場面もありました。この試合では、日野さんは早いカウントから積極的に振ってきますから、自分たちもそれを見習おうということでやってきました。それが、いい形で出ました」と、小倉全由監督はあくまで謙虚だった。
今年の夏も、日大三の壁を破ることが出来なかった日野の嶋田監督。閉会式では、ここまで戦ってきた選手たちを温かいまなざしで見つめていたが、試合を振り返るとさすがに悔しさは隠しきれない様子だった。
「ウチと日大三では積み上げてきたものが違うということでしょうか。この壁をどうしたら破ることが出来るのか、正直わかりません。ベンチの中では、いつも通りの雰囲気で戦えたと思っていたのですけれども、やはり違ったのでしょうか。勝つためには競りあっていかないといけないと思っていたのですけれども、そんな展開にならなかったですね。もうワンランク上にあげていくために何をしていったらいいのでしょうか」と、まだ破り切れない、厚くて大きな壁に挑みつつ模索している様子でもある。
嶋田監督の挑戦は、また新たなスタートを切ったことになる。
(文:手束仁)