試合レポート

巻vs北越

2013.07.16

二回戦屈指の好カード、大熱戦を制したのは…!?

 昨夏、当時二年生エースの佐藤を擁して優勝候補筆頭の日本文理を下し、今春も8強に進出。虎視眈々と甲子園を狙うが緒戦で登場。対戦相手は、昨秋は新潟明訓、今春は村上桜ヶ丘相手に接戦で惜しくも敗れ、シードを獲得できなかったものの、この夏のダークホースとして有力校に挙げられている北越。新潟の高校野球ファン大注目の2回戦屈指の好カードは、1点を争う大熱戦となった。

 序盤、ゲームの流れは北越に傾く。初回、先発・佐藤(3年)から2安打、二回には六番・栗山(二年)の二塁打でチャンスを作るもあと一本が出ず、得点には至らない。一方、北越先発・峯田(3年)は序盤から適度に荒れた球威のある速球を武器に、凡打の山を築く。

 試合が動いたのは三回裏。この回先頭の三番・長谷川翔(三年)がライト線への三塁打で出塁すると、続く四番・杉本(三年)も四球で歩き、すかさずスチール。無死二、三塁のチャンスを作る。だが、続く五番・豊島(三年)のセカンドゴロに、三塁ランナーが飛び出し、挟殺タッチアウト。その間に進塁を試みたセカンドランナーも二、三塁間に挟まれこちらもタッチアウト。一瞬でチャンスを失う。

 両エースの力投が光り、五回まで0対0。だが、・佐藤は被安打6、与四死球2、北越・峯田は被安打0、与四死球3と、対照的な内容で中盤を迎える。
迎えた六回表、ここまで力投を続けてきた峯田は2つの四球で二死一、二塁のピンチを迎えると、五番・河畔にチーム初ヒットとなるセンターオーバーのタイムリーツーベースを浴び、2点を許す。

[page_break:二回戦屈指の好カード、大熱戦を制したのは…!? 02]

 だがその裏、北越もすかさず反撃開始。二死から杉本のヒットと盗塁でチャンスを作ると、豊島の三遊間を抜けるタイムリーヒットで1点を返す。反撃ムードを高めるためにも、3人をきっちり抑えて攻撃につなげたい北越だったが、七回表、ヒットと四球で二死一、三塁のピンチを迎える。ここでの2番・山保(2年)がショートへの内野安打を放つと、強力クリーンアップの3連打で一気に4点を追加。100球を超え、球威が落ちてきた峯田をとらえ、6対1とリードを広げる。

 終戦のムードが漂うスタンドだったが、北越ベンチはまだ諦めていなかった。その裏、ヒットと四球で二死満塁のチャンスを作る。ここで、長谷川翔がライトへヒットを放つと、右翼手がボールを後逸。走者一掃となり、2点差まで詰め寄る。さらに続く八回には豊島がレフトスタンドへ本塁打をたたきこみ、1点差。

 そして迎えた最終回。北越の先頭打者は九番・加藤(2年)。対する佐藤は、ここまで135球を投げる熱投。だが佐藤は、ギアを入れ替え渾身のストレートを投げ込む。一方加藤もフルカウントからなんとかバットに当て、ファールで粘る。球場全体が固唾を飲んで見守ったこの勝負の決着は、17球目。外角低めへの渾身のストレートに加藤のバットが空をきり、一死。続く一番・佐藤(三年)、二番・長谷川輝(三年)も抑えこみ、ゲームセット。炎天下の中、二時間半を超える大熱戦となったこの試合は6対5でが制した。

[page_break:この試合のエキサイティングプレイヤーはこの選手!]

エキサイティングプレイヤー 佐藤悠人(巻)

 好ゲームには「◯◯の◯球」というハイライトがつきものだ。
1979年の日本シリーズで無死満塁のピンチを抑えた「江夏の21球」。1995年の日本シリーズでサヨナラのピンチを抑えた「小林ーオマリーの14球」。近年では2011年日本シリーズで無死満塁を抑えた「森福の11球」。いずれもこの投球が流れを呼び、チームを勝利に導いた。

 この試合の最終回、間違いなく北越に反撃ムードがあった。七回に二点差まで追い上げ、八回の豊島の本塁打で、高校野球特有の“流れ”が北越を後押ししているように見えた。九回、北越の先頭打者九番・加藤は161センチと小柄ながら、粘りが信条のバッター。フルカウントからファールで逃げる加藤に対し、淡々と厳しいコースに渾身のストレートを投げ続けた。一球ごとに高まる緊迫感。それは球場全体のボルテージを上げた。運命の17球目。加藤のバットが空を切った時、佐藤はマウンドで大きな雄叫びを上げた。

 雌雄は決した。

 エースとしてのプライド、そしてここぞの場面での集中力は敵将に「見事」と言わせた。勝負に「たら・れば」は禁物だが、加藤が四球で出塁していたら…。17球の粘りにガックリしたまま、この日3安打の三番・長谷川翔と対峙していたら…。勝負はどうなっていたかわからない。だからこそ、価値がある「佐藤の17球」。試合後、佐藤は球場前で北越主将・長谷川翔と抱き合い、言葉を交わし、健闘を讃え合った。165球の大熱投。ここで得たものは、単なる1勝ではない。敗れた北越の思いも背負い、この夏佐藤は頂点を目指す。

(文:編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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