試合レポート

北中城vs宜野座

2013.07.02

シーソーゲームを制した北中城が二回戦へ進出

 
新人中央大会では八重山商工と延長14回、秋季県大会は那覇西に0-2で惜敗、そして春季県大会では優勝することとなる北山とも延長11回を戦っての1点差負けと、悔しい結果ばかりだった北中城。選手権県大会の抽選でも、まるで魅入られたように秋季県大会優勝の宜野座の隣を引くなど、最後の夏まで強豪校との戦い=僅差の勝負を宿命づけられた感さえ漂った。しかし彼らは、それまでの負けを糧としつつ成長し続けていたことをこの試合で示した。

制球に苦しむエース

宜野座の先発は左腕嶺井辰之輔。秋の優勝の立役者だが、その後故障してしまい、春は全く投げられないまま終える。それだけにこの夏に懸ける思いは人一倍だったであろう。しかしこの日は、その思いが少しだけ気負いとなってしまったかも知れない。

北中城の1番砂川瑠河にライトへ運ばれると、2番玉城大地にもレフト前へ放たれる。さらに四球でいきなり無死満塁のピンチを迎えた。だがここはエースの意地!4番をサードゴロに打ち取る。5-2-3と併殺も可能だったが、サードが本塁へまさかの悪送球。ボールが転々とする間に二塁走者までが生還し、北中城が2点を先取した。なお無死一・二塁となるが、味方がエラーしたからこそ嶺井も踏ん張る。ファーストファールフライ、三振でニ死、その後四球を出すもレフトフライに斬り後続を絶った。

嶺井は2回にも二つの四球と安打で再び無死満塁としてしまう。腕は触れているのだがストライクが入らないのだ。だがここで嶺井は開き直ったかのように別人のピッチングで、二者連続三振、そしてレフトフライと無失点で切り抜けたが、僅か2イニングで投球数は既に62球を数えていた。

一方北中城仲宗根亨もピリっとしない。先制直後の2回表に5番島袋太貴にレフトへ大きな三塁打を打たれると、次打者のゴロの間に三走が生還。3回表には先頭の嶺井を三振に斬るも振り逃げで出塁、続く仲間大洋の足を生かしたショートへの内野安打で無死一・三塁とされ、スクイズで追い付かれ、さらに渡嘉敷如阿太(じょおた)に左中間突破のタイムリー三塁打、そして先程の回で長打を放っている島袋に今度はセンター前に運ばれ逆転を許してしまった。

[page_break:北中城見事なスクイズ返し!そして続出したミスで秋の王者が沈む]

北中城見事なスクイズ返し!そして続出したミスで秋の王者が沈む

5回の裏、宜野座ベンチは嶺井を諦め崎浜秀敏をマウンドへ送るが、その右腕に北中城打線が噛み付いた。

センター前ヒットと犠打で得点圏に進めると、5番永山雄介が右中間へ持っていく。だがタッチアップになるかもしれないとスタートを切れなかった二塁走者は三塁止まり。それでも二・三塁のチャンスで、1、2回と全くそぶりを見せなかった北中城ベンチが、お返しとばかりに初球スクイズ!崎浜から西川へ送られるもセーフとなり1点差。さらに次打者の一ゴロの間にもう一人もホームを踏み、中盤を終えて試合を振り出しに戻した。

そして試合を決する7回の裏は、宜野座にとっては悔やんでも悔やみきれないミスが重なった守りとなってしまった。
先頭打者はサードゴロだったが、これをトンネル。さらに崎浜がボークを取られ進塁を許すと今度はワイルドピッチ。気持ちを落ち着かせる間もなく四球を与えてしまうと、前打席で同点スクイズを決めた國吉昭一朗が、今度は高々とセンターへ。犠飛となり三塁から當銘正多喜がガッツポーズをし勝ち越しのホームを踏んだ。三つのミスが連続で生まれた宜野座は、このイニングでヒットを許さないまま、しかし大きな1点を失ってしまった。

後がなくなった9回表ではあったが、振り逃げと敬遠気味の四球でツーアウトながら一・二塁と一打同点の場面を作り出す。打席の崎浜は、以前外野を守りながらクリーンアップを組んでいたほどの打力を有していたが、最後は仲宗根の前に空振り三振に倒れゲームセット。これまで規定回数で仕留められず、延長に入っては敗れ続けてきた北中城が、この最後の夏に1点を守り抜く野球を見せて二回戦へ進出した。

一方、秋に宮古と沖縄尚学を下し頂点を極めた宜野座は、結果的に春と夏で初戦敗退となってしまったが、金武町と宜野座村を中心とした地域の子供たちが集まって出来た「まとまりのある野球」を貫き、秋の王者として最後まで分からない好試合を見せてくれたことに、心から拍手を送りたいと思う。

(文=當山雅通)

宜野座   TEAM   北中城
守備位置 氏名 打順 守備位置 氏名
三塁 仲間大洋 1番 遊撃 砂川瑠河
中堅 上里大樹 2番 右翼 玉城大地
遊撃 渡嘉敷如阿太 3番 中堅 上原聖哉
右翼 仲間圭吾 4番 捕手 當銘正多喜
左翼 島袋太貴 5番 左翼 永山雄介
二塁 渡久地 涼 6番 二塁 國吉昭一朗
一塁 大嶺 智 7番 一塁 安里雄貴
捕手 西川幸哉 8番 投手 仲宗根 亨
投手 嶺井辰之輔 9番 三塁 仲村健一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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