鹿児島実vs樟南
先制のソロHRを放った福永(鹿児島実)
念願の「タイトル」奪取・鹿実
時折小雨がぱらつくも、大会序盤に選手たちを苦しめた砂埃や風はなく、少し肌寒いぐらいだが、今大会もっともコンディション的には恵まれた中での決勝戦だった。
対戦カードは鹿児島実―樟南。名門2強がNHK旗決勝で雌雄を決するのは5年ぶり10回目。両校とも全校応援で白熱した好勝負は延長戦で鹿児島実が勝利し、5年ぶり10回目の優勝だった。
どんなかたちであれ「優勝」というタイトルを獲ることが今大会の鹿児島実のテーマだった。
「1番になるのと、2番で終わるのでは、6月の練習の気合が違ってくる。内容はいろいろあったが結果が出たことは素直に喜びたい」
宮下正一監督はそう語った。
初回に主砲・福永泰志(3年)がライトスタンドに先制アーチを叩き込んだ。今大会、全試合で初回に得点し、先手を取ったことになる。とはいえ2回以降は追加点が奪えず、接戦になるのも準々決勝以降の対戦と同様だった。
樟南の左腕・山下敦大(3年)の変化球を中心にして、低めとコースを丁寧に突く投球をなかなか攻略できなかった。5回からは毎回先頭打者を出塁させるも、バント失敗や走塁ミスなど拙攻続きで追加点が奪えない。
1―1のまま延長戦に突入。10回は四球で出た走者をバントと内野ゴロで三塁まで送り、2番・住田嵩浩(3年)がセンターオーバーの三塁打を放ち、待望の追加点を奪った。
「決めてやる気持ちは強かったけど、冷静に打席に入れたのが良かった」
住田は言う。空振りを狙う低めの変化球を見極め、数少ない高めに入った失投を逃さなかった。「開き直っていけと言って送り出した。小細工せず、思い切り振ったのが良かった」と指揮官も称える会心の一打だった。
優勝を決めた鹿児島実ナイン
先発の横田慎太郎(3年)は4回までヒットこそ1本しか打たれなかったが、4四死球と安定感を欠いた。5回、先頭の1番・池田将志(3年)に5個目の四球を出したところで、宮下監督は福永にスイッチ。内野ゴロで1点は失ったが「最少失点で同点ならOK」と意に介さず、6回以降も安定した好投で樟南打線に追加点を許さなかった。
樟南としては、今大会3度目となる延長戦だった。今大会ここまで勝ち上がる原動力となったつながりのある攻撃ができず、ライバルに苦杯をなめた。
だが大会を通じて得た収穫は大きかった。左腕・山下にようやく持ち味である変化球のキレと制球力が戻り、失点が計算できるようになった。今田典志(3年)、緒方壮助(3年)、藤野祐太(2年)の中軸でかなりの打点を稼いだが、「彼らを信頼してつないでくれたみんなの力があってこそ」を山之口和也監督は強調する。
何より「やることをやれば結果がついてくる」と確信できたことが最大の収穫だった。
(文=政 純一郎)