桐光学園vs花咲徳栄
先発・松井祐樹(桐光学園)
松井、苦しみながらも18奪三振 桐光学園が花咲徳栄を下しベスト8へ
桐光学園の超高校級左腕・松井裕樹(左投左打・174/75)が苦しみながら強豪、花咲徳栄を延長12回の末、4対3で退けた。ストレートの最速は私が確認できた中でMAX145キロ。数字的には悪くないが、このストレートを6回に打たれて3点目を入れられた。
6回表、花咲徳栄は3番楠本泰史(遊撃手・右投左打・177/70)が中前打、4番若月健矢(捕手・右投右打・178/80)が四球を選んで1死一、二塁とし、2死後、6番松本隼平(三塁手・右投右打・178/75)が3ボール1ストライクからの138キロストレートを振り抜いて左中間を破る二塁打を放ち二者を生還させた。
楠本に対しては変化球を3球続けたのを狙い打たれているが、“緩急”の原則を考えれば1つストレートを見せてからのスライダーなりカーブでの勝負だった。ストレートでいけなかったフラストレーションが松本のときはあったと思う。
松本に対する詳しい配球を言うと、初球→外角低め137キロストレート(ストライク見逃し)、2球目→116キロ抜けスライダー(ボール)、3球目→106キロ抜けカーブ(ボール)、4球目→内角低め136キロストレート(ボール)、4球目→138キロストレートで、このストレートを打たれた。
先発・松井祐樹(桐光学園)
春季神奈川大会のときはもっとストレートで勝負できた。それができなかったのはこの花咲徳栄戦が本調子でなかったからだろう。
たとえば、高目ストレートで三振を奪うシーンがなかった。カーブ、スライダー、チェンジアップとともに、高目ストレートは三振を奪う持ち球の1つだったが、それを使えなかった。苦しんだ要因の1つだったと思う。
それでも強豪、花咲徳栄を<12回、6安打、2四球、18三振、3失点>に抑えたところに松井の凄さがある。
よかったのはチェンジアップだ。とくに三振を取りまくった3回までの序盤は猛威を振るい、6三振のうち3個はチェンジアップによるものだった。
4回以降はチェンジアップをあると見せかけてスライダー勝負、ストレート勝負に切り替わるのだが、昨年までのカーブ、スライダーにチェンジアップが加わったことによってピッチングの幅が格段に広がった。
3番・楠本泰史(花咲徳栄)
この松井に力負けしなかったのが楠本、若月という花咲徳栄が誇るクリーンアップだ。
楠本は5打席のうちヒットは1本だけだったが、第4、5打席のライトフライはヒット性の当りで不運だった。第4打席は桐光学園の右翼手、重村健太(2年・右投左打・172/72)が背走に背走を重ねてジャンプ一番好捕し、第5打席は強い逆風に妨げられた。
若月は第1打席が0ボール1ストライクからのストレートをレフト前に弾き返し、第2打席は1-1からの126キロスライダーを完璧に捉えて左中間フェンスを直撃する、あわやホームランかと思った二塁打。これで松井は戦意を喪失したのか第3打席は4球とも完全なボール球で歩かされた。
2人はディフェンス面でも光った。楠本は捕球がまったく危なげなく、見ていて安心できた。とくにショートバウンドの合わせ方がうまく、大学生のプレーを見ているようだった。
若月は選抜でも強肩が評判だったが、この日もイニング間の二塁送球で2秒切りを連発し、私の計測では最速1.89秒だった。これを見せられたら桐光学園の走者は走ることはできない。相手チームの攻撃パターンを1つ奪っただけでも価値があると言っていい。
(文=小関順二)