試合レポート

市立尼崎vs東洋大姫路

2013.04.28

市立尼崎vs東洋大姫路 | 高校野球ドットコム 

9回同点に追いついた加古川北

???

試合終了後の、両チームの監督の言葉が対照的だった。

「前半、負けペースの試合を何とか(引き分けに)持ち込めたのは、このチームの成長の跡だったと思います」(加古川北・福村順一監督)。

「本来は勝ちゲーム。でもトータルで言うと負けゲームでした」(育英・安田聖寛監督)。

それぐらい、このゲームには両雄の“押し”が前半後半にはっきり出ていた。

加古川北のエース・門前侑太は立ち上がりからリズムが掴めず、初回に2番の福岡真人から二塁打を浴びると、3番の中尾友樹のタイムリーで、先制を許してしまう。

 

続く2回にも7番の吉岡大輝の安打から上位につなげられ、先ほどの回に二塁打を浴びた福岡にタイムリー三塁打。四球を挟み、4番の島康平には得意の足を生かされ、セカンドへのタイムリー内野安打。初回からあわせて、計4点を奪われてしまった。

育英サイドからすれば、上位下位関係なくランナーを優位に進め、守備でもエースの原朋哉が抜群の制球力で加古川北打線を前に6回を投げてわずか3安打と、得意の機動力さえ使わせず、完璧な試合運びと見えた。

だが、加古川北・門前は「開き直って投げるようになった」と福村監督が言うように、3回以降は徐々に低めに球が集まるようになった。育英打線から快音が消え、四球で走者を出しても、バントミスでチャンスを潰した。「あれで4点の点差が点差でなくなった」と、安田監督は唇をかんだ。

この流れを、加古川北は見逃さなかった。7回に一死一、二塁とチャンスを作ると、エンドランのサインで七番の山内智樹のサードゴロから二塁走者の渡辺和哉が生還。続く9番の安東雅史のセカンド内野安打で敷名大史もホームイン。持ち前の足で、果敢に2点をもぎ取った。

序盤の育英ペースから見ると、この回から加古川北に流れが傾いていたのは明らかだった。9回には三連打から安東のレフト前タイムリーで同点。最終回で試合を振りだしに戻したのだ。


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加古川北の先発・門前

実はこの両チームは昨秋の県大会の3回戦で対戦し、その時は序盤に逆転した育英が7対3で勝利を挙げている。

三番手で9回から加古川北のマウンドに上がった吉見哲也は、逆転打を浴びた当時の場面が頭の中を過ぎった。
「あの時は(1番を打っている)御縞(勇人)さんに打たれたので、今日は御縞さんを何としても抑えたかった」と、打順が巡るたびに気合を入れなおした。

延長11回から12回にかけての三者連続三振で序盤にあった育英打線の勢いを完全に止めた。7回を投げて許した安打は3本。味方打線もこの好投に応えたかったが、育英の二番手投手・平岡敬人も6回を1安打に抑え込むなど、両チームの控え選手が奮闘した。

「うちは秋までここまでの展開に持ち込めなかったので、粘り強さを出せたのは好材料。でも、勝ちきれないのは、まだ何かが足りないということ。(再試合まで)1週間あるので、仕切り直しです」。福村監督が笑顔まじりで話したのに対し、安田監督は試合後ナインを集めて怒号を飛ばしていた。

「(9回の一死一、二塁のピンチは)冬場のノックで何度も想定してやってきた。それが生かせていないということは、冬の練習を生かせなかったということです」。最終回の場面で、粘り切れなかったことを悔やんだ。

ひと冬を超え、成長の跡を残したチームと、鍛錬の成果を生かせなかったチーム。今日の試合ではスコアの差にはない、成長の差を現した格好となったが、20日に行われる再試合([stadium]明石トーカロ球場[/stadium]9時開始予定)でこの差がどう出るのか注目してみたい。 

(文=沢井史、写真=中谷明))

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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