試合レポート

埼玉栄vs八潮南

2013.04.27

埼玉栄vs八潮南 | 高校野球ドットコム

エース宮沢(八潮南)

積極策がもらたした苦戦

 最初に言っておくが決して貶しているわけではない。”ストライクゾーンの球を積極的に振りに行く”、その行為自体は素晴らしい試みだ。投手としても振ってくるとわかっている相手ほど怖いものはない。メンタルの弱い投手だとそれを見てストライクを投げきれなくなることも起こりうる。

 この日の埼玉栄打線はそれをテーマに戦っていたようだ。それは八潮南のエース宮沢がまとまりがある好投手であり、スライダーにキレがあり追い込まれると厄介だ。その対策でもあったのであろう。

 うまく嵌ればあっという間に大量得点を奪える可能性もあるが、それは同時に早打ちになる危険性も孕んでいる。諸刃の剣なのだ。埼玉栄はそのテーマに縛られ過ぎている感じすらした。それが苦戦を招く要因となるとは。一巡目での見逃しストライクが僅かに2。ストライクゾーンの球はほとんどと言っていいほど打ちに行っていた。

 相手が埼玉栄で[stadium]県営大宮球場[/stadium]で戦う初戦ということもあり、初回はやや緊張感のみられる八潮南。それに対し埼玉栄打線が襲い掛かる。ニ死から3番・溝呂木が四球を選ぶと、続く酒井がファーストへの強襲ヒットを放つ。二死一、二塁から5番・芝崎 純平がセンター前へタイムリーを放ち1点を先制すると、さらに続く横銭のセカンドゴロの間に埼玉栄に追加点が転がり込む。ビッグイニングにこそならなかったが、初回から2点と出だしは順調であった。

 埼玉栄は3回表にも、この回先頭の神山が相手のミスで出塁すると、続く溝呂木が送り4番・酒井がライト前ヒットを放ち一死一、三塁とする。ここで打席立った芝崎がレフトへ犠牲フライを放ち3対0とする。


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芝崎(埼玉栄)

 だが、徐々に八潮南内野陣が落ち着きを取り戻したことや、宮沢の好投、そして埼玉栄打線が10球前後で凡退を続けることも相まってゲームは膠着する。それでも流れが変わることは考えにくかった。なぜなら埼玉栄には絶対的な存在であるエース芝崎 純平がいるからだ。この日も目測で常時130キロ中盤のストレートは伸び、球威、キレも申し分なくこのストレートを中心に組み立て時折スライダーなどを交え凡打の山を築く。

 八潮南は、少ないながらもランナーが出ると、芝崎に対し足で揺さぶりをかける。2回裏は無死一塁からディレードスチール、5回裏は二死一、三塁からエンドラン。この2回の仕掛けは最終的に得点には結びつかなかったが、その姿勢を継続し8回裏ついに得点に結びつける。
 この回先頭の岩本がレフト線へ二塁打を放つと、続く宮沢の所で三盗を決める。宮沢はきっちりとライトへ犠牲フライを放ち八潮南が1点を返すとやや戦況が変わった。

 芝崎に抑えられ9回裏も二死となり、八潮南もこれまでか思われたがここから反撃。4番板垣がレフト前ヒットで出塁すると、続く代打・柏木がレフト越えタイムリー二塁打を放つ。1点差に詰め寄った
 だが続く山澤が倒れゲームセット。最後は芝崎が踏ん張った埼玉栄が1点差で辛くも逃げ切った。

 八潮南は最後まで諦めない好チームだった。悔やむべくはエラーで失った初回の2点目か。それでもそれを切り替え終盤勝負へ持ち込んだその戦いぶりは立派だ。昨夏も前評判の高かった埼玉松山を破るなど力をつけている。持ち前の粘りで夏もサプライズをみせてくれるのではなかろうか。

 一方の埼玉栄だが、チーム力を考えれば圧倒的に優位かと思われたが積極策がこの日は裏目となり思わぬ苦戦を強いられた。ただこの日は県大会初戦、強豪校が苦戦することはよく見られる光景だ。そこは差し引いて考えなければならない。次戦の相手は好投手・平良 チアゴを擁する本庄第一だ。もちろんこの積極策は投手によってということであろうが、微調整が必要であろう。力はあるだけにシード権をかけた次戦に埼玉栄の真価が問われる。

(文=南英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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