浦和学院vs前橋育英
髙橋光成投手(前橋育英)
1年生エースの経験
1回に喫した1点を追う前橋育英は5回表、8番髙橋光成(1年)のセンター前ヒットから三連打で満塁の場面を作った。守る浦和学院のミスも重なってのチャンスで、打席は2番高橋知也(2年)。
マウンドの浦和学院エース・小島和哉(1年)が投じた初球が、高橋知の足に当たり、同点となる押し出し死球となった。
さらに二死満塁から4番荒井海斗(2年)がライト前へのタイムリー。二塁走者はホームでタッチアウトとなったが、逆転に成功した。
前橋育英の1年生エース・髙橋光は、187センチの大型右腕、その体格を生かした力強い直球は140キロを計測していた。だが、速い球にしっかり対応してくる浦和学院打線を相手に、球数が前半からドンドン増えていく。1点を失った1回以降は粘り強く投げて無失点で切り抜けていたが、「普段(この球場で投げている時)と違って、上がっていた。関東大会の雰囲気は違いました」とマウンド上で不安を感じていた。
その不安が勝ち越した直後の5回に現実のものとなる。
1番竹村春樹(2年)からの打順で、思うようにストライクが入らなくなってきた。竹村に四球を与え、バントの構えを見せた2番服部将光(2年)に対してもボールが先行。結局、痛恨の四球となってしまった。
「アウトを一つずつ」と確認し合った前橋育英内野陣。次の3番山根佑太(2年)は1回に先制の口火を切る二塁打を放っているが、無死一、二塁ではさすがに送りバントの構えを見せた。
1球目がバントでファウル、2球目はボールとなった後の3球目。山根のバントは一塁線に転がった。見送ればファウルになるかもしれない微妙なあたり。これをファーストの工藤陽平(1年)は迷わずキャッチし、目の前にいた山根にタッチした。
確認しあった通り、アウトを確実にとった前橋育英。逆に、バントを成功させた浦和学院ベンチは拍手をしていた。
「自分達なら取らずに見送ってもよかった打球かも」と浦和学院のキャッチャーで主将の髙田涼太(2年)は話す。その言葉は、あくまでも、アウトを一つ取るという考えは変わらないが、どちらでもできる打球との見識に受け取れる。普段の犠打と同じように、自分達の考え方と、相手の考え方に違いが生まれる場面だったのかもしれない。
小島和哉投手(浦和学院)
一死二、三塁となって4番髙田はストレートの四球で満塁になった。球威が落ち始め、コントロールに苦しむ髙橋光。この場面で打席に立った5番木暮騎士(2年)がレフトへ犠牲フライを放ち、浦和学院が同点に追いついた。
さらに6番斎藤良介(2年)の打順で、代打に渡邊剛(2年)を送った浦和学院の森士監督。渡邊は初球をセンターへ弾き返して二塁走者が生還。再びゲームをひっくり返した。
7番西川元気(2年)にもタイムリーが出て、このイニング3点を挙げた浦和学院。逆に髙橋光にとっては、四球で出した走者を全て得点に繋げられる悔しいイニングとなってしまった。
5対3と2点差で迎えた9回表、一死から連打などで二死一、三塁とチャンスを最後のチャンスを作った前橋育英。この日2安打に4番荒井が打席に立つが、初球が荒井の手に当たって死球となる。しかし、5番小川駿輝(2年)がピッチャーゴロに倒れてゲームは終わった。
「浦和学院さんの圧力を選手たちは感じていたと思います。髙橋光は、球数を多く投げさせられてヘバッてしまった。でも(今後の)経験にもなると思って最後まで投げさせました」と話した前橋育英の荒井直樹監督。
その言葉通り、期待の1年生エースにとっては、今後の糧とできる要素が満載のゲームたったことだろう。
一冬を超え逞しくなった姿が楽しみに待ちたい。
一方の浦和学院は、エースの小島が12安打を浴びながらも3失点。夏の甲子園で経験した悔しさが大きな成長に繋がっている。同じ1年生投手同士の対決だったが、現状での経験値の差がこのゲームでは、はっきりと出た形と言える。
(文=松倉雄太)