鳴門vs徳島商
2年連続12回目の秋季大会優勝を決め、
マウンド上に集まる鳴門の選手たち
鳴門の主砲・伊勢隼人、四国級から脱皮の胎動
2回表に徳島商業が188㎝の1年生一塁手、7番・坂東駿の左越適時二塁打で先制すれば、その後は鳴門が5点を奪って逆転。それをもろともせず2対5で迎えた8回表に「(徳島池田に4対9と徳島大会初戦敗退の)夏以来、特に心の部分や考え方を見直した」(森影浩章監督)徳島商業が代打・早淵優大(2年)の2点二塁打などで3点を返して同点に追い付けば、その裏に鳴門は二死二塁から2番・中野勇輝(二塁手・2年)の三塁打で再び勝ち越し。決勝戦は名門校同士による一進一退の攻防が繰り広げられた。
結局「よく粘りました」と森脇稔監督も認める激戦を制したのは鳴門。2年連続16度目の秋季徳島県大会優勝と同時に来年3月の県高野連沖縄県派遣校の座をつかみ、3季連続の甲子園出場へも大きく前進した。ひとしきり喜びに湧く選手たち。その中に、ひときわ目を見張る動きが見えたのは182センチ87キロの巨漢4番・伊勢隼人(2年)の姿もあった。
準決勝戦・生光学園戦ではレフト場外に高校通算第13号本塁打を放ち、この日も二塁打1本を含む5打数3安打2打点。が、目を引いたのは得意のバッティングだけではない。
「自主ネット越しに打球を打ってもらって、それをよけることで反射神経を磨いたり、反復横とびにも取り組んだ」一塁守備では以前のように打球にバックステップを踏む場面が消え、「遅いことを逆手にとった」脚の部分でも4回に左前に安打を放つと、レフトのもたつきを突いて二塁に進む好走塁を披露。「準決勝でもレフトがもたつく場面があったので、狙ってはいた」と、野球頭にも格段の成長が見られている。
センバツではスタメン出場2試合で6打数2安打も、済々黌(熊本)の前に初戦敗退に終わった夏の甲子園では代打1打席のみに終わった伊勢。その悔しさを胸に臨む四国大会の意気込みを聞くと「僕は明治神宮大会ではバット引きだけに終わったので、この代で明治神宮大会に行きたい」と2年連続の秋季四国大会制覇にも意欲的な姿勢を示した。
こうして主将の3番・河野祐斗(遊撃手・2年)も「伊勢の前に僕が打てばビックイニングになる」と全幅の信頼をおく主砲が目指す四国級からの脱皮。その作業段階が胎動から熟成に変われば、今年センバツベスト8の鳴門は再び甲子園を沸かせるチームになれるはずだ。
(文=寺下 友徳)