報徳学園vs東洋大姫路
報徳学園の先発・乾
負けられない戦い
両チームの選手の頭が五厘にきれいに刈られていたのは、それだけ気合が入っていた証だった。
「自分は今朝から結構緊張していました。やっぱり東洋（東洋大姫路）が相手となると、絶対に負けられないですから。実際に戦ってみて、やっぱり東洋は気の抜けない相手でした」。
報徳学園の4番を打つ片濱大輝が話すように、互いを良きライバルと認め合う両雄の試合は、県内屈指の好カードとも称されている伝統校同士の戦いだ。
試合は報徳学園のエース・乾陽平、東洋大姫路のエース・横田徹寛の投げ合いで序盤は静かな立ち上がりとなった。
だが、3回。報徳学園の三木淳史が二塁打で出塁すると、9番の乾が犠打で送り、横田の暴投で思わぬかたちで報徳が先取点をもぎ取った。
対する東洋大姫路は乾に6回までパーフェクトに抑えられ、攻撃の糸口すら掴めなかった。報徳も毎回のようにヒットで走者を出すが、あと1本が出ない。
乾の快投もあり、内容からすると報徳学園が優位に見えはしたが、1対0のままスコアは固まったまま回だけが進んでいく。報徳学園からすれば喉から手が出るほど欲しい「あと1点」は、8回に持ち味を発揮して得ることになった。
先頭打者の1番・勝岡静也がライト前へヒットを放つ。相手のライトがファンブルするのを目にした勝岡は、すかさず二塁を陥れた。
「最初は行けるかな…というのはあったのですが、ライト（のファンブルする姿）を見て、自信を持って二塁まで行きました」と勝岡。
勝岡は、ここまで二度のチャンスに凡退していた悔しさもあったかもしれない。だが、50ｍを6秒フラットで駆け抜ける俊足を持つ勝岡にとっては、相手の隙を突いた、これぞという走塁だった。そのあと2番の栗野渉が犠打をきっちり決め、4番の片濱が左中間を破る三塁打を放ち、勝岡が生還。終盤にあまりにも大きい追加点を得た報徳は、9回にも相手のミスで3点目も奪った。
ゲームセットの瞬間、大喜びする報徳ナイン
序盤からキレのあるストレートで８回までを３安打に抑えていた乾は、8回に二死を取った後に連続安打を浴びてピンチを背負ったが、危なげなく切り抜けた。9回裏のマウンドは中軸の打者と相対した。前の試合で9回に同点アーチを放っている4番・清名将麻を迎えた時は「絶対に打たせてはいけない打者」（乾）と、自慢のストレートで空振り三振に仕留めた。ここという場面で三振を奪えるピッチングに「今日は乾の頑張りに尽きる」と永田裕治監督はエースを称えた。
昨秋の県大会の準々決勝でも、両者は顔合わせをしている。その時は2安打完封勝利を収めた当時のエース・田村伊知郎がマウンドで仁王立ちした。
「去年のチームは田村さんという大黒柱がいた。でも、今年のチームは柱もないし、力もない。特に自分は旧チームから出ているし、前の試合で得たことをしっかり伝えていきたいと思います」（勝岡）。
2年連続の秋の“伝統の一戦”は、犠打や走塁をしっかりと決められる手堅さと、持ち味を存分に発揮した報徳学園にまたしても軍配が上がった。
(文・写真＝沢井史)
