試合レポート

松山商vs東予

2012.09.29

松山商vs東予 | 高校野球ドットコム

4回表二走・畝本良汰(2年)が一挙ホームへ

松山商業「緊迫感」を全面に県大会初戦を制す!

「もう、練習は終わり!試合まであと28時間、1から、グラウンド整備からやり直せ!」

試合2日前の9月27日夜、松山商業グラウンドに重澤和史監督の怒号が響いた。無理もない。
「残り1本で終わり」と決めたシートノックでエラーを繰り返す選手たち。「もう1本お願いします!」の声も「どこかで捕れば監督さんからOKが出るだろう」といった弛んだ声。そこには緊張感のなさが充満していたからだ。

あえて私感を述べれば個々の能力的には、新チームをはるかに凌駕する旧チームがついに甲子園をつかめなかったのも、その雰囲気をそこかしこに出していたから。監督の姿が消えると選手たちから途端に緊張感が消える姿は、次第に悪しき習慣となっていた。

もちろん指揮官はその傾向を十分感じていた。だからこそ、新チームではあえてこのタイミングで緊迫感を授けたのであろう。そしてその緊迫感は試合当日も全く変わることはなかったのである。

試合中はバントを失敗すれば「頭を動かしていない!」とベンチからの鋭い指摘が。試合後も選手バッグの並び方にわずかなズレがあれば「先輩たちを甲子園に連れて行ったバックに何をするんぞ!」と烈火のごとく補助選手たちを叱責。正に鬼であった。


松山商vs東予 | 高校野球ドットコム

松山商業先発・野田賢吾(2年)

そして松山商業は東予地区予選1回戦で前年秋季県大会覇者の愛媛小松を8回コールド・9対2で下す金星をあげ、意気揚々と県大会に乗り込んできた東予に何もさせなかった。

8月からサイドスローに挑戦し、最速を136キロまで伸ばした先発・野田賢吾(2年)は、5回3分の1を69球6奪三振被安打わずか2。
打線も相手のミスと外野守備の脆さを見逃さず積極走塁で10安打で10得点。

「スターはいないがしっかり野球をしている」と話しした東予・佐伯宏幸監督の松山商業評は、「突出した選手がいないので、束になって組織で戦う」チームコンセプトと表裏一体となったものであった。

ただし、松山商業・2回戦の相手は最速148キロ右腕・安樂智大(1年)擁する済美である。中予地区新人大会2回戦ではリリーフに立った彼を打ち込んだ実績があるとはいえ、この日は[stadium]西条ひうち球場[/stadium]で2年生を多く抱え、夏の愛媛大会準優勝を果たした川之江を3安打17奪三振完封と完璧に抑えた怪物を再び倒さなくては、センバツへの道はない。

となれば済美戦では東予戦以上に緊迫感のある野球を展開し、今度は監督に動かされるのではなく、自ら勝利のために緊迫感を高める必要がある。「本当は連戦でやりたいんですけどね」と去り際に笑顔を見せた重澤監督。その瞳の奥には確かな勝算をたたえた、あの夜同様の鋭い眼光があった。その光の真意を選手たちが感じ取ることができるかどうか。そこが「新生・松山商業」誕生への最後のパーツとなる。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!