美里vs前原
勝利後の美里ナイン
中部を代表する注目の対決は、泥くさくて粘り強さを貫いた美里に軍配が上がった
前原高校は2012年の夏ベスト4を始め、11年の春と10年の秋でベスト8。美里高校は12年の春と11年の秋にベスト8、同11年の新人中央大会で準優勝と近年も実績を残している沖縄本島中部地区を代表する両者が、主要3大会(春夏秋)では2005年の春季県大会3回戦で顔を合わせて以来7年と半年振りにぶつかった。
ところが蓋を開けてみれば序盤3回が終了して前原・金城諒と美里・伊波雅司の、両チーム先発投手が合計8つの四死球を与えてしまう締まりの無い展開。加えて打線にも繋がりが見られない。前原は初回に無死一・二塁も3番が送れずに最後は空振り三振。後続クリーンアップも絶たれ無得点。2回にも一死一・三塁でピッチャーゴロ、その後ニ死満塁と変わるもセカンドゴロ。対する美里も初回ニ死から3者連続四死球で満塁とするもショートゴロと互いに得点機を逸し続けた。
先制したのは3回表の前原。ニ死二塁から6番仲嶺がライトオーバーの二塁打を放ち、ようやくホームを踏むことが出来た。これで立ち直ってくれるのがエースというものだろうが、金城諒はそのベンチの期待に応えられなかった。
泥くさいヒットで同点
美里・池宮城朗監督
「たんぱくな打者が多いので、粘って粘って、しつこくしようというのが今年のチームのテーマ。そういう意味でも3番の吉浜が打ったライト前の同点打は、泥くさい点をもぎ取ったなという感じでした。」
池宮城監督がそう振り返った3回の裏の美里は、1番木村がセンター前ヒットで出塁するとエンドランを仕掛けるがスライダーにタイミングが合わず空振り。しかし木村のスタートが良く、結果盗塁成功。その木村は続く遊ゴロで三塁を陥れ、一死三塁と同点機を演出する。ここで3番吉浜はフラフラと平凡な当たりに見えたがライトの前に弾み同点タイムリー。この”泥くさいヒット”がチームに活気を与え、6番伊波のセンター前への逆転タイムリーに結びついた。
先発伊波
美里は4回にもニ死二塁から監督の息子でもある2番池宮城がレフト前タイムリー。6回裏には一死二塁から相手の連続ワイルドピッチで労せずして1点を加えて試合を決めた。
美里の先発伊波は、まるで綱渡りをしているかのようなピッチングで初回から7回まで全て得点圏に走者を背負ってしまう。だが90km台の緩いカーブにシンカーが効果的で、本人曰くこの日良かったというスライダーも駆使して最小限度の失点で乗り切ると、8回9回は別人のように連続三者凡退で前原に付けいる隙を与えなかった。一方前述したように前原の敗因は何と言っても7度中7度あった全ての得点機で、たったひとつしか奪えなかったことに尽きる。だがどこかで1本出ていたら全く違った展開になっていただろうし「 伝統の前原だからすぐに立て直してくるでしょう 」と池宮城監督が語ったように、今後の上位進出の可能性を秘めている力があることは存分に見せられたのではないだろうか。
2012年の前原は屋宜駿杜、平敷祐人ら。美里は元将太郎、仲宗根 康二らといったその年代を代表する好選手が多かった両チーム。偉大な先輩たちの後を負う責務は生半可ではないが、それに臆することなく自分たちの野球で、ファンを多いに魅了して欲しいと願う。
美里・池宮城朗監督
――試合を振り返って――
「走塁ミス、サインミスが多くて(2回と6回に一塁走者が牽制アウト。4回には二塁走者が同じく牽制アウトなど)。でも守備は良かったかな。ピッチャーはコントロール!緩いボールを狙われたりしてね。ワンパターンなんですよね、配球が。
今のチームは夏から総入れ替え。でもコツコツと面白いチームなんです。意外とバッティングも打つ。(抽選会前にやった)前原との練習試合では(この日2番手で出てきた)左の子を打ち崩して7回までに11点取りました。大会ではそう簡単に行かないぞとは言ってましたけどね。
去年(新人中央大会準優勝での第二シード)のようなプレッシャーが全くない、(良い意味で)気が楽なチームです。(今後も)良いチームと当たったら一発喰ってやろうかなと。
まぁこのチームはスロースターターだし、守備では取れるボールも飛び込まないといった感じで、おとなしい子が多い。だから気持ちが負けないように、闘志を前面に出させたいなと思ってます。
――息子さんの活躍に――
守備は元々そんなに悪くない。セカンド(名嘉真)も上手いんですよ。二人共取ってからは早いんだからと、焦って投げる必要なんかないよとそこだけ注意してました。」
美里・伊波雅司投手
「5回終了時点でフォームを点検したら徐々に良くなってきました。それ以降(ヒット3本に抑えた)が本来の形です。(再三)スコアリングに(走者が)いたけど、ショートとセカンドの見えないファインプレーなどに助けられました。
(ベンチ裏で車椅子の新垣君が叱咤激励)もっと緩急をつけろとか、胸の開きが早いから抑えろとか。声も大きいし頼りになります。」
(文=當山雅通)
前原 | TEAM | 美里 | ||
守備位置 | 氏名 | 打順 | 守備位置 | 氏名 |
一塁 | 眞鶴孔大 | 1番 | 三塁 | 木村拓也 |
三塁 | 金城一輝 | 2番 | 遊撃 | 池宮城広也 |
遊撃 | 桃原優介 | 3番 | 中堅 | 吉浜清亮 |
右翼 | 古谷陽太 | 4番 | 捕手 | 比嘉健汰 |
投手 | 金城諒真 | 5番 | 一塁 | 屋宜大輝 |
中堅 | 仲嶺有一朗 | 6番 | 投手 | 伊波雅司 |
捕手 | 上原一晟 | 7番 | 二塁 | 名嘉真辰也 |
左翼 | 渡久地脩平 | 8番 | 左翼 | 呉屋 翼 |
二塁 | 當眞将生 | 9番 | 右翼 | 冨里川隼汰 |