試合レポート

東大阪大柏原vs三国丘

2012.07.19

最後まで強打者たちに立ち向かったエース

 もう、極限状態だった。
「8回のマウンドに上がる前に、右足が攣ってしまったんです。でも、まだ2点差だったし、ここで粘らないといけないと思って、必死で投げました」と悔しそうな表情を浮かべた三国丘のエース・片桐崇裕

8回を終わって2対0。
昨夏の大阪覇者・東大阪大柏原の強力打線に立ち向かった三国丘のエース・片桐崇裕(3年)。
2回にタイムリーで、5回に暴投で計2点を失ってきたものの、7回までわずか4安打に抑えていた。
「左打者には内角を攻められたし、右打者には外のスライダーが有効でした。余計なことは考えずに、とにかくしっかり腕を振っていこうと思っていました」と片桐。
だが、その気持ちがゆえに序盤は飛ばしすぎたところがあったのも事実だった。

「初回に連続三振を奪ってから、どんどん押していこうと思って…。とにかくアウトを取ろうと、目の前の打者に向かっていっていました」と、5回あたりからスタミナにやや限界を感じた時もあった。
それでも逃げたくない、という思いが心を支配し、終盤以降も集中力を切らさなかった。

東大阪大柏原の先発・福山純平(3年)の力投も刺激になっていた。福山も速いストレートとスライダーで凡打の山を築いた。両エースの意地と意地がぶつかり合ったまま、イニングが進んでいった。


迎えた8回裏のマウンド。一旦持ち直したと思っていたはずの片桐の体は予想以上に疲労が襲っていた。
3番の末武雄貴(3年)を振り逃げで出塁させると、4番の望月涼太が犠打で送って一死二塁。ここから3連打を浴びて、2点を奪われてしまった。
満塁のピンチの状態で、三国丘ベンチは片桐を一塁に残し、石崎達也が二番手投手としてマウンドに登った。
だが、石崎はストライクが入らず3四死球を与えてしまう。ここですかさず、片桐をマウンドに戻したが、たたみかけてきた東大阪大柏原打線を前に、集中力を取り戻すのは片桐にとって至難の業だった。

ここで迎えたのは3番の末武。2球目の渾身の力を込めて投げたストレートを、末武は力いっぱい振り抜いた。
打球は高らかと上がり、無常にもライト後方に消えていった。満塁ホームラン。東大阪大柏原の応援スタンドが大いに湧く中、マウンド上の片桐は何度も汗を拭い直していた。

「序盤までのピッチングを終盤に出来ていたら…。最後は自分の力不足でした。あの1球は本当に悔いが残ります」。
試合後、涙をこらえながら悔しさを押し殺した。
それでも、最後まで逃げずにあきらめずに強打者たちに立ち向かった。

昨夏の大阪王者を最後まで苦しめた片桐のマウンドさばきは、見る者の心に深く刻み込まれたに違いない。

スターティングメンバー
東大阪大柏原
8伊藤弘太
7山口健汰
6末武雄貴
9望月涼太
1福山純平 (主将)
5太田義成
2清水亮佑
3園田佑大
4伊東崇基

三国丘
5高瀬心
9斉藤達也
1片桐崇裕
6山田弘樹 (主将)
2木村律也
8薮内拓也
7坂東拓哉
3辻林大揮
4高階空也

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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