立花学園vs三浦学苑
秋元秀明の可能性
この試合はチームよりも個人に注目が集める試合である。
三浦学苑のエース秋元 秀明(右/右 186センチ80キロ)は投打で高いパフォーマンスを見せる逸材。初戦でノーヒットノーランを果たし、今大会は好調をキープしている。
立花学園は一番水戸 海人(右/右 178/74)、四番鈴木 邑基(右/左 176センチ74キロ)、エースの荒川 政樹(右/右 181センチ75キロ)が注目される。
投手としての秋元。私が想像していたよりも好投手だった。
右上手から投じる直球は常時135キロ~140キロを計測。たびたび140キロ台を計時しており、スピード能力は中々だ。投球フォームはノーワインドアップから始動して、軸足をしっかりと上げて、重心を沈みこんで、真っすぐな体重移動を行う振り下ろす本格派右腕らしい投球フォーム。やや開きの速さが気になるが、無理なく回旋が出来る上半身の使い方が出来ており、投手としての筋を感じさせた。
変化球はスライダー、カーブ、フォークの3球種。この3球種とストレートのコンビネーションで、ピッチングを組み立ててテンポ良く打者を打ち取っていた。クイック、フィールディング、牽制も率なくこなしており投手としての完成度は高い。
野手として評価される見方もあるので、野手としても注目してみたが、この日は無安打で、野手としての良さは分からず。ヘッドが遠回りしたスイングで、変化球の対応力に欠けており、打者として駆けていいほどのスイングの強さ、押し込みの強さは感じなかった。この試合に関して言えば投手・秋元に魅力を感じた。
立花学園の水戸は外野ノックから俊足を活かした守備範囲は光るものがあり、レフト際の打球にも俺が捕ってやるという意気込みが見える。地肩も強く、外野手として高いレベルに到達している。ただ打撃が荒削り。始動の仕掛けが遅く、トップの位置が安定しない。ややヘッドが下がり、アッパースイング気味なので、フライになることが多い。アッパースイングだとしても、振り出しからインパクトまでの絶対的なヘッドスピードの速さはなく、打撃面の荒削りさが印象に残った。
鈴木は守備力に関しては評判通り。常に低い体勢でボールを待ち、素早くボールを処理することが出来ている。グラブ捌きも柔らかく、捕ってから投げるまでの動きも早い。特に三遊間の深い打球を踏ん張ってダイレクトスローは思わず唸らされるものであった。ただネックが打撃。彼は四番打者に座っている。つなぎのための4番打者ならば、いいが、彼の打撃スタイルは「俺が決めてやる」のアッパースイング。始動が遅く、ヘッドが下がったスイングになってしまいことごとく打球を打ち上げていた。自分の打撃スタイル、立ち位置を見失っているかのような打撃内容であった。
立花学園の荒川は常時130キロ~135キロ前後(最速137キロ)と秋元ほど速くはないが、ストレート、スライダーを適度に投げ分けるテンポの良い投球。投球フォームはやや左肩が遊ぶ独特の投球フォームで、0を積み重ねて入った。
試合は立花学園が4回裏、小林隼士(2年)のタイムリーで先制。8回裏、2番瀧川翔太(2年)の右中間を破る二塁打。二死となって、4番鈴木がレフトへ落ちるポテンヒットで、追加点。さらにレフトの落球、再び小林のタイムリーで4対0とすると、最後は荒川が9回を3人で締めて、ゲームセット。4回戦進出を果たした。
いろいろな選手を見る事が出来たが、この試合では三浦学苑のエース秋元のパフォーマンスが一番印象に残った。大学・社会人を経て、どれだけ伸びるか楽しみな逸材だ。
(文=河嶋宗一)