試合レポート

大阪桐蔭vs近大附

2012.05.13

大阪桐蔭vs近大附 | 高校野球ドットコム

中川雅裕投手(近大附属)

挑む!そして戦って得たもの‼

スコアボードの8回裏に灯る『5x』という文字。王者・大阪桐蔭に挑んだ近大附は、9回表の攻撃を迎えることなく、無念のゲームセットを迎えてしまった。

先発した中川雅裕(2年)は、1回と2回に1点ずつ失ったものの、その後は粘り強く投げて大阪桐蔭に追加点を許さなかった。
打線は、大阪桐蔭網本光佑髙西涼太(ともに2年)から得点できなかったが、それでも差は2点。3番山本和輝(3年)から始まる9回の打順を考えれば、2点という差はまだわからないと言えるものだった。

7回の守りを三者凡退で切っていた中川。8回、できれば3人で打ち取って、良いリズムを攻撃にもたらしたかったはずだ。
だが、中川は先頭の安井洸貴(2年)を歩かせてしまう。
「7回あたりから球威は落ちてきていた」と感じていた藤本博国監督。安井に対しては、先に1ボール2ストライクと追い込みながら、ファウルで粘られ、結局根負けした形での四球だった。藤本監督はこの場面を第一のポイントに挙げた。

その後、6番白水健太(3年)がヒット、7番笠松悠哉(2年)が送りバントで1死2、3塁と状況は進んだ。
打席は8番の妻鹿聖(3年)。中川は2ボール2ストライクと優位なカウントに持ち込んだが、ここでも最後の勝負球が決まらない。結局フルカウントからの6球目が高めに外れ歩かせた。

空いていた一塁が埋まり、満塁。打席は9番髙西涼太(2年)
「後ろが森(友哉=2年)なので、繋ぐ気持ちだった。追加点がほしかった」という心境だった髙西がフルカウントから放った打球は、レフトの頭上を超える走者一掃の二塁打。2対0だったゲームが、5対0になった瞬間だった。
「一塁が空いているケースとはいえ、(打順を考えれば)歩かせてはいけない場面だった」と藤本監督は妻鹿への四球を第二のポイントに挙げた。


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田中誠也(近大附属)

中川はこの3失点で降板し、左腕の赤間亮介(2年)へ。しかし1番森にストレートの四球を与えると、指揮官はすぐに右の田中誠也(3年)にスイッチした。それでも、崩れたリズムは戻らず、守りが乱れ、気がつけばコールドゲームが成立。
やや呆然と挨拶の列に並んだナインの表情が印象的だった。

現在、日本一のチームとの対戦。藤本監督は、「気(持ち)で負けるな」とナインに檄を飛ばしていた。
立ち上がり、バッテリーが「慎重になりすぎた」(藤本監督)と先制を許したが、それでも最少失点にとどめていた。相手に追加点を与えず、攻撃でも得点機があった。決して王者相手でも、気持ちで劣っているような流れではなかった。
それだけに、最後の攻撃ができない形になったのは悔やまれる所だろう。

「負けて言うのもなんですが、収穫があった大会」と振り返った藤本監督。

ミーティングでは首脳陣から、「強くなるためには、どうしたらいいか?練習しかない。それにもっと自信をもって臨んでほしい」という言葉を受けたナイン。
最後の夏へ向けて残り2カ月を切った今、全国王者にぶつかったことがどのように作用するだろうか。


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4番・辻田大樹(大阪桐蔭)

一方の勝った大阪桐蔭
西谷浩一監督は、「フライアウトが多く、攻撃に関してはまだまだ」と振り返った。この日で言えば、主将で3番を任される水本弦(3年)が「状態が良くない」と2打席凡退後に高井光佑(3年)と交代した。
新4番の辻田大樹(2年)は2安打と活躍したが、満塁で回ってきた最後の打席でセカンドフライ(結果は失策でコールド成立)を打ち上げてしまったことに、苦言を呈していた。

試合の中で思うことは多いようで、「(メモに)書きとめている」と話した指揮官。今は、具体的にミーティングでは多くを話していないそうだが、夏へ向けて課題とする部分はかなり感じている。

ただ選手は決して、甲子園の優勝=自分達の力と思っていない所が指揮官の救い。「自信(力)があると思っていれば、過信がでてくる時期」と話すように、本当の自信がないのを自覚しているからこそ、貪欲に目の前のゲームに臨めているようだ。

指揮官も次のステップへ模索を続けている。「大会中の選手入れ替えはできないけど、使いたい選手は多い」とメンバー内外での競争意識が強いことを明かした。
この日登板した投手陣も夏のメンバー入りへ争っている段階で、「藤浪(晋太郎=3年)と澤田(圭佑=3年)以外の投手はまだわからない」と西谷監督は話した。
ゲームを見ていても、甲子園優勝校というオーラではなく、競争意識というオーラがにじみ出ているように思える。

スターティングメンバー
近大附
2大橋将大、3奥村友彦、4山本和輝、8細川晃佑、5麓大成、9ダフィー太平、7杉本涼太、 1中川雅裕、6岸田匠平
大阪桐蔭
2森友哉、4大西友也、9水本弦、3辻田大樹、7安井洸貴、8白水健太、5笠松悠哉、6妻鹿聖 1網本光佑

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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