試合レポート

東亜学園vs創価

2012.04.22

東亜学園vs創価 | 高校野球ドットコム 

岩出 篤哉(東亜学園)

東亜バッテリー、創価打線を翻弄!ベスト4進出

 まさに東亜バッテリーが最後まで創価打線に手玉に取った試合だった。春季東京大会準々決勝・東亜学園創価の対決。この試合は東亜学園の正捕手・岩出 篤哉のリードが冴えわたった。

東亜学園の先発・福山聡史(左/左 172センチ68キロ 2年)。背番号1の古川響の先発が予想されたが、上田監督は福山を選択。先発を伝えたのは昨日のことだった。

「福山については3回~4回まで投げてくれれば良いかなと思っていました。とにかく今日は投手5人の総力戦です」
初回からベンチ入り投手がブルペンで投球練習を行っていた。福山は細身の左腕。スピードこそ120キロ台だが、手元で切れるストレートが持ち味。その間にスライダー、カーブを織り交ぜて淡々とピッチングを組み立てる。技巧派に見えるが、東亜学園の正捕手・岩出は「良いストレートを投げる左腕です」と評する。だが福山は気持ちが弱いのが欠点だった。岩出は試合前にこう伝えた。

 

「打たれて良いから腕を振っていけと伝えました」
本人には腕を振れと伝え、岩出はストレートを選択する。初回は殆どがストレート。その意図を聞くとこういう答えが返ってきた。

「ストレートは腕が振れないと活きていきませんので、序盤はストレートで押していって、腕が振れる状態にしていこうと思いました」
 初回に先頭打者を出塁させたが、二死二塁で4番田中正義をストレートで詰まらせてライトフライに打ち取った。計算通りの配球で打ち取ったことで、東亜学園に流れが傾くことになる。

 2回の表、岩出がレフトの頭を超える二塁打で出塁。6番藤井は投前犠打。池田が処理して、三塁へ送球したが、送球が僅かに逸れてセーフ。無死1,3塁のチャンス。6番梅木がストレートに詰まられながらも中前へ落とし、東亜学園が先制する。さらに5回の表、一死から1番苫篠翔太が四球で出塁。俊足の苫篠にとって四球はヒットと同然。苫篠は盗塁を敢行。鮮やかに二盗を決め、2番布施が中前安打。苫篠が三塁に留まったが、センターの田中がファンブルしていたのを見逃さなかった。田中は慌ててバックホームをするが、間に合わず。1点を追加。布施も二塁へ。さらに3番蓑原の中前適時打で1点を追加し、3対0。


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先発した福山聡史(東亜学園)

 3回~4回まで予定だった福山は好投。岩出の思惑通り、しっかりと腕を振り出したことで、切れのあるストレートが出てきた。岩出は創価の打者がストレートに狙いを絞ってきたので、途中から変化球を織り交ぜ、腰砕けにさせて内野ゴロに打ち取る配球。
「福山も良いですが、なんといっても岩出のリードが上手いです」

上田監督は福山の持ち味をしっかりと引き出している岩出のリードを評価した。そして5回にはストレートで空振り三振。試合前に腕を振って、ストレート中心の配球が、この場面で活きてきた。福山も岩出のリードに乗せられる形で、テンポが良くなった。

福山はゴロピッチャー。創価の打者は本当に内野ゴロが多い。内野ゴロのアウトは二桁を超えて、東亜学園のバッテリーの術中にはまっていた。その創価は7回の裏二死三塁のチャンスで池田。池田は三塁ゴロ。変化球に引っかけられ、完全にバッテリーの思惑通りの打ち取り方になったが、サードの送球がファーストにわずかに届かず。エラーにより1点を返した。

 

9回の裏、先頭の野田が右前安打で出塁。ここで東亜学園はここまで好投の福山が降板。エースの古川が登板する。ベンチに戻る福山に東亜学園スタンドは労いの声を送った。8.0回を投げて1失点(自責点0)。見事な投球だった。窮地の場面に上がっても古川は冷静だった。4番田中を空振り三振。5番相田は中飛。6番野口は四球だったが、7番池田を中飛に打ち取りゲームセット。東亜学園がベスト4進出を果たした。

まさに岩出のリードが光った試合。福山の持ち味・性格を把握し、配球を組み立て、創価に自分たちの打撃をさせなかったリードは見事だった。しかし、どんな良い捕手でも、投手に応えなければ絵に描いた餅。福山は実に粘り強かった。彼が得点圏にランナーを背負うこと4回。しっかりと自分のピッチングに徹し、点を与えなかった。

「今までなら崩れていると思うのですが、予想以上の粘り強さでした。ひと冬越えて逞しくなったのかな」
岩出は後輩投手の成長に目を細めていた。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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