伊勢崎工vs長野原
伊勢崎工業田村投手
大敗にも芽吹く経験。その先の初勝利へ
「秋季大会は前日に棄権連絡をしました。9人ギリギリの所で1人の選手が怪我をしてしまいましてね。
9ヶ月ぶりの公式戦ですけど、なんとか食らいついていきたいです。学校のグラウンドが使える様になったのが極最近の事です。2月から毎週、前橋や高崎のグラウンドまで練習に行ったり、練習試合解禁後は精力的に試合経験や合同練習を積んできました。」と長野原高校 大谷監督。
一昨年秋、昨春と記録的な大敗。一時は大谷監督自身が廃部も考えた。教員として教壇に立つ大谷監督は選手達に自主性が芽生えて欲しかった。前橋南高校に64-1と記録的大敗をした後、部の存続など今後については選手間ミーティングで決めさせることにした。 まさかとは思ったが、全員がこのままじゃ終われないという結論に纏まったと聞かされた。
試合巧者の伊勢崎工業相手にどこまでやれるのだろうか。少しでも良いから食らいついて欲しいと願う大谷監督。
対する伊勢崎工業は、ほぼ正選手で固めた布陣を展開する。
背番号1の田村投手がマウンドに立つ。右上手から丁寧に投げる直球に2回には3者連続三振を喫する。3回以降三振は無くなるものの凡打の山を築く。
あえて、ほぼ直球での組み立てで試合に臨んでいる様だ。
長野原の先発青木は右スリークオーターから100km少々の速度ながら指に掛かった時のボールはキレがある。
「この間までレフトでしたけど、変化球を覚えてきたり自覚を持って努力はしているんですが」と大谷監督は言う。
1回はランナーを出しながらも伊勢崎工業を無得点に抑える。2回もランナーを背負いながらも2死まで漕ぎ着けた。
しかしあと一人打ち取ればチェンジだと思い始めたからなのか気が緩んでしまいましたと青木が語るボールは伊勢崎工業
9番久保田に左中間を破る2点タイムリー2塁打を打たれ更に連打で4点を奪われる。
長野原 青木君はワインドアップを2段モーションと注意され動揺したところを伊勢崎工業は逃さない。
3回には5点 4回には11点を加え20-0と大量にリードする。
前述の久保田君はバットの重さを利用した様な無駄のないスイングが特徴的だった。
長野原ー青木投手
伊勢崎工業は好投を続ける田村投手に替わり背番号13 左腕の根岸をマウンドへ。千葉ロッテの成瀬投手の様なテイクバックからテンポ良く投球する。 長野原も交代直後を攻め外野に打球が飛ぶ様になるが安打にならない。
最終回も良い当たりをしたものの無得点で試合終了 5回コールドで伊勢崎工業が勝利する。伊勢崎工業は投手2人のリレーで参考記録ながら完全試合達成となる。
伊勢崎工業は青木のボールを大振りせずコンパクトに合わせた打撃で鋭い打球を飛ばすのは流石試合巧者と言ったところだろうか。
長野原 青木は2ストライクまで追い込む展開も多かっただけに決め球につかえる様なボールがあれば試合展開は変わったのではないだろうか。
対して長野原高校。今回も大量失点で敗退することになってしまった。
スコアだけ観ればそうだろう。 しかし内容を見ると、世代は変われど着実に成長していることは伺える。
昨春は追いつくことすら出来なかった打球、反応できなかった打球。今回は追いつくことができる、捕ることが出来ている。課題は捕球後だろう。
試合後に、捕手の星は
「練習試合では上手く出来ていた事が公式戦になると全然できなくて、捕らなきゃいけないボールが全然捕れなくて自分に悔しい」と涙を浮かべながら語ってくれた。
試合後に大谷監督は選手達を前「負けたのは全部監督の責任。これは間違い無い事」
「高校内では一番一生懸命やっている部活だと思います。でも明日からは高校内ではなく県内で一生懸命やっているレベルの部活にしよう。その為には普段の生活が野球にもリンクすると言うこと。私も明日からは一層身を引き締めます。なので君たちも普段の生活も一生懸命やっていって欲しいと思います」と語った。
選手たちの元気な返事と、部長先生に「提出物を月曜日に!」と言われている数名の部員の苦笑いが周囲に反響した。
主将の神倉は 次は9回まで試合が出来ることを目標にします。野球を好きでやってくれているのが一番の救いです と星野コーチが言った。そうやって少しずつ少しずつ公式戦初勝利に向かって進んでいく長野原ナインの視線は夏へ向かう。
(文=木内 慎治)