南稜vs大宮西
高橋君(南稜)
技術力だけではない力が、似た者同士の勝負を左右
県大会地区ブロック予選の初戦で当たるには、ちょっともったいないなと思えるカードである。県内の公立校勢としては、お互いにほぼ専用グラウンドを有しているし、周囲にも支えられて、練習環境も整っている。そして、熱心な指導者がそれぞれの思いを注ぎ込みながら、それがチームに浸透してきているという点でも、似たようなチームだということがいえる。
大宮西は市立校ということもあって、鈴木久幹監督が20年近く一貫して指導し続けているのだが、ここ何年かでも、楚材的には恵まれて力はある方だと感じているチームだ。これに対して、埼玉南稜の遠山巧監督は昨年、一昨年のチームに比べても、この年のチームは個々の力はないチームだという認識である。
ただ、いずれにしても、試合そのものは接戦になるだろうと予想はされていた。それは、両チームの指揮官も同じ思いだった。ところが、結果は埼玉南稜が快勝という形になった。
遠山監督としても、「ボク自身が目指す野球ではないのですけれど、このチームとしては、今の段階でやれることをやって点数にこだわらないで、相手に食らいついていく野球が出来たと思います」と評価していた。
それは、球にスピードがあって力もある大宮西の先発草薙君に対して、ファウルするなどして粘って、球数を放らせていたところにも表れている。ことに、白石君、竹原君の二人で初回は10球、3回は18球も投げさせている。その挙句に、2死三塁となったところで、4番高橋君がフルカウントから、三遊間を破るタイムリー打で先制した。
増田君(大宮西)
大宮西の鈴木監督も、ここが勝負どころだったと振り返る。「リズムも悪かったですし、球数も多くなっていたのですけれども、結局捕手が根負けして、ストレートを要求して打たれちゃったでしょ。もう、一番良くない打たれ方、負け方の試合でした。まあ、考えようによっては夏前にこういう負け方で、反省材料が見えてよかったともいえるんですけれどもね」と嘆いていた。
6回にも埼玉南稜は2四球と失策で追加点を挙げ、さらに一二塁というところで上農(かみの)君が左前打して、3点目。結局、草薙君は6回はで135球を投げることになってしまっていた。冬場に故障もあっては仕込み切れなかったことも、投球に粘りがなくなっていた要因にもなっていたという。
大宮西は7回から、澁谷君を送りだしたが、食らいつく南稜は内野安打と四球などで満塁として、2本の犠飛でさらに2点を追加した。打つべきところできっちりと犠飛が打てるというのも、きっちりと振り込んでいるという証であろう。
埼玉南稜は先発した高瀬君が上手に緩い球を使いながら大宮西打線を抑えて、6回までで被安打2の6三振。そのうちクリーンアップが5三振。いかに、巧みにタイミングを交わしていたのかということであろう。そして、7回からは、バッテリーごと交代するという思い切ったものだった。「ウチはリリーフキャッチャーもいますから…、捕手も3人でまわしています」とケロリと言ってのけた。
結果的には、攻守ともに、完全に南稜に翻弄されてしまった形になった大宮西。秋春通じても、県大会出場を逃したのも久しぶりのことである。「県大会は、連盟の仕事に専念しますよ」と、鈴木監督は肩を落として少し残念そうだった。
(文=手束仁)