鳥栖vs高志館
初瀬(鳥栖)
鳥栖エースの成長で6季ぶりとなる九州大会のキップつかむ
鳥栖は、六回の先制点をはじめ打線をつないで得点した。守りでもエース初瀬耕輔を中心に堅守で、快進撃で勝ち上がった高志館を下し、6季ぶりとなる九州大会出場を決めた。
先発・初瀬耕輔は、立ち上がり高志館の先頭杉本翔太にセンター前に運ばれる。だが、後続を絶つと、二回以降六回まで3人で打ち取り付け入る隙を与えない。「いつも立ち上がりがリズムが悪い。だがバックを信頼して力を抜いて投げることができた」と右打者の外角へ逃げるナチュラルにシュートする直球とカウントをとる緩い縦のカーブを武器に、打たせてとる投球でリズムをつかむと最後まで丁寧にコースを突き、わずか3安打に高志館打線を抑えた。
打線も、無得点で迎えた六回。二死から3番八坂康司の内野安打を皮切りに、4番西依拓真の中前安打で一死一、三塁。6番打者は好投をつづける初瀬。
その初瀬は自らのバットで左中間を破る適時二塁打ををたたき出し2点を先制。七回にも8番古賀のライト線を破る適時二塁打で追加点を挙げリードを広げ高志館を下した。
その能力の高さを買い平野監督は、1年時から初瀬を登板させてきた。だが、制球の不安からリズムを崩し打ち込まれることが続いた。それでも我慢強く起用してきた。今夏、制球からリズムを崩し、敗れたあと「先輩たちに申し訳ない。もっと制球をよくしなければ」(初瀬)と積極的に走り込みを行なった。また8月の練習試合では9日間で、8試合に登板。強豪相手に投げきった。
そして、地区予選となる斎藤杯で鳥栖商を相手にノーヒットノーランで勝利した。「きつい走り込みをしてきたこがノーヒットノーランにつながった、初めてで自信になった」(初瀬)という通り、この試合以降、さらに不安のあった制球や、突如四死球から崩れる姿は陰をひそめた。
この日の準決勝も、危なげなく3安打に抑え無四球。味方の失策から1点は失ったものの、落ち着いたピッチングで付け入る隙を与えなかった初瀬。課題であった制球の不安を克服し、秋、決勝に導いた左腕は「このまま、佐賀1位をとって九州大会で強豪相手に投げたい」と力強く語った。
「ようやく雛(ひな)がかえったかな」と好投をみせた初瀬を、優しい目で見た平野國隆監督。我慢し起用しつづけ、ようやくこの秋、結果をだした。「全国に通用するよう雛から成長してほしい。そのためにも佐賀1位で九州大会へ行きたい」とエースの好投に目尻を下げながらも、明日の決勝を見据える。
(文=藤吉ミチオ)