広島商vs広島工
本塁打を放った竹田(広島商)
古豪・広島商、6年ぶり中国大会切符!槇本&竹田が連続ホームラン
相手のミスをつく“広商らしさ”と、長打で加点する“広商らしくなさ”が同居する試合だった。すべてが点に結びつく試合となり、広島商は広島工を7回コールドで勝ち上がった。
圧巻だったのは6回の攻撃だった。相手二塁手の失策などのミスを利用して得点を重ねた。2死2、3塁から槇本浩志(2年)は広島工の好投手・辻駒祐太(2年)のスライダーを左中間に運んだ。打った瞬間にスタンドまで届くことを確信していた。会心の一発に笑顔を見せながらホームを踏む。続く4番・竹田徹司(2年)は初球の直球を狙い打ちだ。左中間方向へ飛んだ打球は芝生席を軽く越えた。こちらは槇本と対照的に表情を変えることなくダイアモンドを淡々と1周した。
6回に大量6点を奪って、7回コールド勝ちで準決勝進出を決めた。同時に6年ぶりに秋季中国大会進出を決めた。槇本は「気持ちよかったです。(4番の)竹田がいつも警戒されるので、3番としては楽に行けます」と主砲を称える。
一方、竹田は「次の打者につないでいくことを考えています。右中間方向の打球を意識しています」と淡々と話す。今夏、広島商は49年ぶりに初戦敗退した。先輩たちの悔しさを受け継いできた。2人とも迷うことなく広商を志して入学してきた選手たちだ。栄光の歴史を自分たちの手で取り戻すことに必死になっている。田坂誠志郎(2年)が7回無失点に抑えるなど、投打がかみ合っての完勝だった。
檜山忠監督は今夏に就任したばかり。「公立なので、そんなに力のある選手ばかりはいない。地に足をつけて練習でやってきたことを試合に出せるように取り組んでいる」。背伸びはしない。2年前の夏に尾道商をノーシードからベスト4まで勝ち上がらせた実績のある指揮官だ。1992年春には広商の選手として甲子園に出場経験もある。敵将の広島工・沖元茂雄監督は檜山監督の選手時代、広商のコーチだった。いわば“師弟関係”にある。「賢い選手だったし、(尾道商など)監督として今までいた学校でもいいチームをつくっていた。桑原さん(秀範、広島商前監督)の鍛えてきたチームをいい方向に作っている」と評価する。
チーム全体に浮かれた部分はない。檜山監督は「子供たちには“1戦1戦”と言っている。試合をしながら足りない部分を見直して、1ヵ月後の中国大会に臨みたい」と話す。新生・広商は、中国大会の切符を獲得するだけで満足するチームではない。
(文=中牟田 康)