城南vs小松島西
城南先発・上田雄太(2年)
城南、弟たちが模索する「強打」のモデルチェンジ
旧チーム同様に強打の爪あとを示す1回裏「6」の数字。ただし、先頭の平井寿弥(2年)こそレフトオーバーの2塁打で出塁したものの、1四球・1犠打を挟む残り5本の安打は全て単打だった徳島城南。振り幅を小さく、内野の間を抜く強い打球を意識したスイングは、センバツ1勝の原動力ともなった「長打狙い」とは180度趣を変えたものだった。
では、このような大胆な方針転換の理由は?試合後、森恭仁監督は報道陣の前で新チームの選手たちに伝えたことを包み隠さず話してくれた。
「8月の練習試合で個々の適性を見た時点で、選手たちとも話し合ってこういうチームにしました。その時に『あれはお兄ちゃんがしたこと、僕もそれを追い求めることはしないし、地味にやっていこう』という話も選手にはしてあります」。
よって、今回のチームは打順もポジションも固定にあらず。現在は甲子園経験者である織原誉(2年)が「4番・三塁」、夏のレギュラーだった立道幸樹
(2年)が「5番・一塁」を張っているが、指揮官も「このチームは12~13人同じ実力を持った選手がいるので、調子がいい選手、相手投手を考えながら練習を見て決めます」と、今後も日替わり打線が続くことを明言している。
ただその一方で旧チームから変わらないものも。どの打者も甘い球を積極的に打っていく思い切りの良さは全打者に健在。ベンチ上で試合を見守った旧チーム4番・エースの竹内勇太(3年)もこの姿勢に「思ったよりみんな積極的に振れていましたね」と笑顔を見せていた。
「今は水戸黄門の印籠のように名前で相手がこけている状態ですから」と森監督は絶妙の表現で現在のチーム状態を言い表したが、印籠の効果は努力と結果次第でいつまでも続くもの。この秋から城南の指導陣に加わった西尾義信コーチからも「賢い子が多いけれども、素直だし、貪欲です」と一定の評価を得た「弟たち」は、これからも本当の印籠=実力を自らのスタイルでつかみとりにいくはずだ。
(文=寺下友徳)