与野vs岩槻商
加藤君(与野)
９回２死一二塁、あと一人の場面から与野が逆転サヨナラ
９回２死一二塁だが、あと一人を抑えれば岩槻商は、部員10人ながら、プロック予選を通過して県大会進出を果たすところだった。
与野の打者は、９番岩崎君に代わって代打飯泉君。
岩槻商丸山君は、８回まで６安打２失点で力投を続けていた。若干、ストレートが浮き気味になってきたとはいえ、球の力はそのまま生きているかと思えた。最後の１球のつもりで渾身の力で投じたのだが、その打球は、フラフラと一塁手の頭上を越えてポトリと落ちた。二塁走者中村君が帰ってきて１点差。
さらに、１番加藤君の打球は三遊間深いところだが、下田君が横っ跳びで好捕し、一塁送球もしっかり届いたが、わずかに一塁セーフで内野安打となり同点。こうなったら、押せ押せの与野は岩原君の打球は、やや詰まっていたものの、左翼線の難しいところに落ちてこれがサヨナラ安打となった。
この回だけで与野は５安打を集中してひっくり返した。最後まで諦めないという気持ちが、こうした逆転を呼び込んだのだろう。
試合展開としては、前半は岩槻商ペースだった。
初回、１番中島君が巧みなバント安打で出ると、きっちりバントで送り、さらに牽制悪送球で三塁へ進むと、下田君が一二塁間を破ってソツのない形で鮮やかに先制。武井君も右前打してつなぐと四球後、２死満塁となったところで死球で押し出し。なおも、８番丸山君も一二塁間を破ってこの回３点目を奪った。
185㎝の大型投手田中君の立ち上がりを巧みに突いた形だったが、２回にも２死二塁から、武井君が力強いスイングで左越二塁打してさらに１点を追加した。わずか10人の岩槻商だが、選手個々は、しっかりと自分たちの練習を積んできた成果を、試合で十分に発揮していたという印象だ。
丸山君(岩槻商)
田中君は３回頃から、角度のあるストレートが決まりだして、本来の投球になってきた。
結果的に、岩槻商として悔やまれるのは５回、６番金子君の中前打と川又君の二塁打で１死二三塁という場面、丸山君の内野ゴロで三走が本塁を狙ったものの、本塁タッチアウト。さらに、２死一三塁で、ディレードダブルスチールを仕掛けたものの、本塁でタッチアウトという場面だ。打順も下位ということもあって、須合啓監督としては、追加点が欲しいところで、仕掛けていったのだが、与野の守りも慌てることなく、崩しきれなかった。
６回以降は、田中投手もすっかり立ち直り、６、７、８回は３者凡退で抑え９回の逆転サヨナラへの伏線を作った。
初回に、浅見君の三塁線二塁打で１点を返した以外は、安打しつつも攻めいれないでいた与野だったが、８回に２番岩原君が左中間を破り、その打球が一番深いところに転がっていって、ランニングホームランとした。これも、９回の逆転へつながっていたのかもしれない。
いずれにしても、チームとしてはまだ発展途上の秋季大会の序盤である。今の段階で、お互いがやれる範囲のことをやって、力を発揮しあったという点では好試合だったといえよう。初回の牽制悪送球以外は、失策もなかった。決して華やかではなくても、ピンチで２つの併殺を記録した岩槻商の守りも、10人だけで練習してきたとは思えないくらいに、しっかりと鍛えられていたという印象だ。
今の気持ちを維持して、さらに精進してほしい、そんな思いで見守りたいチームでもあった。
(文＝手束仁)
