如水館vs山陽
迫田采配またも的中!如水館3年連続決勝進出
またも経験を生かした采配が的中した。4試合で総得点52、総失点3と、打力・投手力ともに上回る山陽に対して的確な作戦で破った。
「私が気負っていても勝てない。カリカリするのは止めた。“ダメもと”という気持ちで行ったら結果がよくなった」。如水館・迫田穆成監督は試合後に冷静に振り返る。
7月3日に72歳になったばかり。広島県内の最年長監督が山陽の弱点を洗い出した作戦は見事に的中。如水館は3年連続で決勝進出を果たした。
迫田監督の作戦はこの2つだ。
【1】三塁へのセーフティーバントはない
山陽は犠牲バントで仕掛けてきても、セーフティーで揺さぶりをかけることはなかった。1年生サードの島崎翔真は「セーフティーバントはない。深めに守るように言われました」と話す。迫田監督が山陽の過去のデータを分析してのものだった。準決勝でも傾向は変わらなかった。三遊間に強く飛んだゴロをいくつもさばいて、山陽の強打を封じ込めた。
【2】山陽は疲れている
迫田監督は山陽の練習を見守っていて気付いた。それはノックの時間だ。「ノックが5分の短さで終わっているのを見て、相手が疲れていると思った。試合でエラーが出ると思った」と指揮官は語る。
その予感は序盤の2回に的中した。島崎が遊ゴロエラーで出塁後の1死二塁から、木村昴平の二ゴロを相手が後逸。敵失で1点を先制すると、佐藤の中前適時打などで加点。山陽の好投手・中川皓太から序盤に早くも3点をもぎ取った。
大会直前まで迫田監督も強気になれないチーム編成だった。しかし、選手たちは経験を積みながら成長していった。
1年生で4番の島崎は「大きいのを打つというのではなく、つなげるという気持ちで打席に向かっています」と話す。派手さはない。その分、つなぎの野球に徹することで決勝進出までたどり着いた。
「山陽には絶対勝つ!という気持ちが強かったです。ここまで来たら、次も絶対に勝ちます」。1年夏からレギュラーで甲子園経験もある金尾元樹はチーム全体の気持ちを代弁していた。経験豊かな選手たちが指揮官の知恵を生かしたとき、2年ぶりに夏の大舞台が見えてくる。
山陽は勢いを完全に止められた。4試合連続コールド勝ちしてきたチームの得点は、9回に返した1点のみだった。3番・岩城裕平、4番・茶谷本晴幾、5番・森川丈太郎のクリーンアップで放った安打はわずか1だった。茶谷本は4打数無安打、3三振。「4番が3つも三振しては勝てない。(投手の)中川やチームに申し訳ないことをしました」とうつむく。森川は「悔しいです。ここまで来たので勝ち続けたかったです」と涙を流していた。
左腕・中川皓太は腰痛で一時は練習さえできない時期があった。今大会初めての完投を果たしながら報われなかった。直球のMAXは141キロを計時した。「何度も野球を止めようと思った。でも、みんながいたからここまで続けることができました」とナインに感謝していた。
(文=編集部)