健大高崎vs高崎東
星野君(健大高崎)
隣り同士対決は、3時間に及ぶ大熱戦で健大高崎サヨナラ勝ち
高崎市の中心部からやや東の高崎インター近くに、高崎健康福祉大キャンパスがある。その中に、健大高崎もあり、キャンパスの奥には合宿所と野球部の専用球場がある。
そして、そのセンター後方の川を挟んで向こう側には高崎東がある。距離にしておよそ100mほどである。
そんな近隣同士の対決となった。
お互いに意識しているのは当然だろうが、6月には健大高崎のグラウンドでナイターの練習試合も行った間柄でもある。ちなみに、その時は、健大高崎が5―3で勝っているという。
しかし、高崎東の先発マウンドに登ったのは、その時とは違う背番号6の塚崎君だった。
健大高崎としては、ちょっと予想外の先発投手だったようだ。それでも、先制したのは健大高崎だった。
3回、健大高崎は八番宇野君が出塁すると、バントと小池君の内野安打と盗塁で1死二三塁とする。ここで、二番湯本君が右前へ二者を返すタイムリー打。力としては、一枚上だろうと思われる健大高崎が先制したことで、試合は健大高崎ペースで進んでいくであろうと思われた。
ところが、高崎東の気迫はすさまじかった。
いつも、健大高崎の練習している声なども意識してきたのだが5回、「よーし、この回行くぞ!」というベンチからの声で送りだされた九番趙君が中前打で出塁すると、バントで進み、二番武田君の中越三塁打で1点を返す。さらに、塚越君も中前へタイムリー打して同点とした。さらに、柳沢君も安打が出たところで、健大高崎ベンチはたまらず先発星野君を諦め、リリーフに生井君を送り込んだ。生井君は、ワンポイントながらしっかりと抑えて期待に応えた。
そのまま同点で試合は進行していくことになったのだが、6回には健大高崎は無死二塁という好機を逃した直後の7回、高崎東に試合の流れが来た。
片貝君(健大高崎)
健大高崎の3人目三木君に対して、四球とバントで1死二塁となる。
ここで、健大高崎は4人目としてエースナンバーをつけている左サイドの変則タイプ片貝君を投入。
ところが、二塁走者の趙君の足がつるというアクシデントがあり、微妙な中断があった。
そして、再開した初球を武田君が叩いて左中間を破ってついに高崎東が勝ち越した。趙君はぎこちない走りながらホームまで駆け抜けた。片貝君としては、最初なのでストライクを取りに行こうというところだったのだが、それが高く入ってしまった。
点の入り方としては、健大高崎としては、非常に厭な感じのものだった。しかし、8回に高崎東のスクイズを見破って、追加点を阻止したことで、再び流れを呼び戻した。その裏、健大高崎は、一番からの好打順で2死三塁から四番門村君が執念で内野安打して同点とした。
そして、試合はそのまま延長となった。片貝君は9、10回を無難に抑えていたが、塚越君はややすっぽ抜け気味になることもあったが、それでもここまで好投を続けていた。
しかし10回、健大高崎は一番からの好打順だったが、小池君が中越二塁打すると、続く湯本君のバントを一塁へ大高投してしいまい、二塁から小池君がホームインしてサヨナラとなった。
大熱戦だっただけに、最後がこういう形だったのは、野球の神様も酷なことをするなと思った。
こうして、近隣対決は非常な形で幕となってしまった。
高崎東の高田彗監督は、「いい試合で終わるのではなく、勝ちたかったですね。格上の相手だと思っていたのですが、準備もしっかりとしてきて、対等以上にやれただけに、残念です。それでも、学校としては、部活動の中で野球部が学校を引っ張っていくという形を示すことが出来つつあると思います。そして、今日の試合を見てくれた人たちに、高崎東が頑張っていると、応援してやろうと、そういう気持ちになってもらえる試合は出来たかなとは思います」と、言いつつも無念さをにじませていた。
一方、近年は上位の常連となっている健大高崎。今年で創部10年目、節目の年に甲子園初出場を…、ということを目指しているが、苦しい試合を何とかものにした青柳博文監督は、「こういう勝ち方は大きいですね。ただ、5~6月の練習試合でも強豪校との接戦が多く、それを勝ってきていましたから、こういう展開でも焦らないで行こうという気持ちでした。1点リードされても、3イニングありますから、大丈夫だと思っていました。投手は総力戦になってしまいましたが、高崎東の執念を感じました」と、薄氷の勝利を振りかえっていた。
(文=手束仁)