第93回全国高校野球選手権福島県大会開会式
優勝旗返還
福島の夏、開幕
第93回全国高校野球選手権福島大会が13日、福島県郡山市の[stadium]開成山野球場[/stadium]で開幕。今大会に参加する87校の選手たちが、澄み渡る青空のもと、元気な入場行進をみせた。
今年は、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響で、福島では春季大会の中止を余儀なくされた。
原発近くの相双地区には、避難のため部員がバラバラになってしまった高校もある。県中地区やいわき地区でも、放射能の影響を考慮し、長期に渡り練習を自粛した高校も多い。野球がやりたいのにできない、みんなで練習したくてもできない、そんな辛い状況の中から、問題を一つずつクリアし、何とか夏の大会を開催するところまでこぎつけた。
関係者の「何とか選手たちに野球をやらせてあげよう」そんな気持ちが結集して、ようやく開催に至った2011年夏の福島県大会だ。
開会式当日の朝6時半には、[stadium]開成山球場[/stadium]の放射能の線量を測定。基準値を下回ったため予定通りに行われることになった。
午前10時前には各校の選手たちが続々と外野の芝生に集合。例年のような場内一周はなく、外野から内野までを前進するだけの簡略された入場行進だが、それでも選手たちには「野球ができる」「大会ができる」ことへの喜びからか、笑顔がこぼれていた。
入場行進にあわせ、スコアボードには各校からのメッセージが紹介された。単独チームでは参加できず、3つの高校の選手で結成された相双連合は、もちろん3校分の思いが紹介された。
双葉翔陽は「心を1つに~ONE FOR ALL ALL FOR ONE~」
相馬農業は「がむしゃらにプレーする! 雑草魂」
富岡は「富岡町の人達のために全力でプレーします」。
また、部員が転校などで半分に減ってしまった双葉高校は「支えて下さった全ての方々に感謝し全員野球で甲子園の切符を勝ち取る」とのメッセージが映し出された。
行進する聖光学院ナイン
選手宣誓は学法福島の塩瀬龍主将。
「宣誓が決まったときから、なるべく自分のそのままの言葉を入れたいと思って、一生懸命考えてきました。監督にもみてもらい、最終的にいい文面ができたと思う」という塩瀬は、「少し緊張した」と言いながらも長い文面を、間違えることなくきっちりとハッキリと言い切った。
強調したのは、「支え合う夏! 助け合う夏! 思いやる夏!」という部分。
また、「勝ち負けという枠を取り払い、人と人とのつながりを大事にし、日本一暑い夏にする」というところ。
立派な宣誓に、スタンドからは大きな拍手が送られていた。
開幕ゲームでは、双葉リトルの渡邉玲磨くん、万崎龍汰くんのバッテリーが始球式を行った。
双葉リトルは原発近くで活動しているため、震災後、避難生活を余儀なくなれ、チームはバラバラになってしまった。今は月に数回集まれるかどうかという状況。ずっとバッテリーを組んでいた渡邉―万崎の2人も、今は遠くに離れて暮らしているため、これまではいつでもできたキャッチボールが、今はなかなかできない。
まだまだ苦しい状況は続くが、この日の2人は苦しいことも忘れ、渡邉くんの投げた渾身の1球を万崎くんがしっかりと受け止めた。
見事なストライク!
数年後、今度は高校球児としてこの球場でプレーする2人が見たいものだ。
なお、今大会は被災してしまった方々にも試合を見てもらおうと、入場料は全球場で無料になっている。
(文=瀬川ふみ子)