東海大甲府vs富士学苑
高橋周平
リベンジからのスタート
今秋のドラフトを見据えながら、プロ野球のスカウトの多くが高校生ナンバー1野手と評価する東海大甲府・高橋周平内野手の初戦。
昨夏、敗れた富士学苑(3回戦1-7で敗戦)に相手が決まったときには、雪辱への思いを隠すかのように「くじ運が悪いんです」と控えめなコメントを残した高橋。
試合は3-1で東海大甲府が勝利。この1年間頭に刻まれていたであろう悔しさを、勝つことできっちりと精算した。
そして試合でバットを握らせれば、その存在感は際立っていた。
3番ショートで出場の高橋の第一打席のシチュエーションは1死1塁。富士学苑バッテリーは広角に鋭い打球を飛ばせる高橋には外一辺倒では1試合対峙できないとばかりに初球、インコースのストレートを選択。
体に近いボール球になるが、それで高橋のインステップする踏み込みが甘くなることはない。続く2、3球目の外角のストレート、スライダーを悠然と見極めると、4球目のストレートが高めに外れてフォアボール。
軸足に体重を乗せてから踏み込むまでの時間が十分に取れているから、ボール球に手を出すことは少ないし、甘い球は見逃してくれない。
あるスカウトの「ひと振りで打てるバッター」との評が思い出された。
第二打席はまさに、そんな打席だった。
1死走者なし。カウント0ー1から外角のボール球を2球、見送った後の4球目。やはり外角の球だったが、今度は高橋の打てるコースだった。
しっかりと踏み込み、この試合の初スイングから放たれた強い打球はサードベースに当たるヒットとなった。
第三打席はミスショットのセカンドゴロに終わったが、第四打席ではライト前へライナーを放った。
高橋周平
本質的には、本人も話しているようにホームランを狙って大振りするようなことはなく、広角にライナー性の打球を打ち分ける中距離打者タイプ。それでもここまで70本のアーチを架けてこられたのは、高いミート力とヘッドスピードの速さによるところが大きいのだろう。
体もできているため大学生が一人、紛れ込んでいるかのような印象さえ覚えた。
走塁面でも際どいタイミングのタッチアップや、積極的なスチールも見られたのだが、声や指示はよく出しているものの守備に対する意識はあまり高くないように見えた。
ランナーが止まっているとはいえ、外野手から球をもらってからの送球の際にスナップだけでフワッと山なりの球を投げたり、ピッチャーが投球動作に入っているのにまだセンター方向を見ていて慌てて体勢を整えたり。
ちょっとしたことかもしれない。だが、その少しの積み重ねが、自分を上に引き上げてくれる。
この試合、難しいバウンドだったとはいえ正面のゴロをエラーしたように、守備はバッティングと比べてまだ差が大きい。
プロでの内野手は守備が良くなければポジションを掴めない。
プロでも内野を守りたいと思うならば、そのあたりの意識改革は今後の課題と言えるかもしれない。
(文=鷲崎 文彦)
(撮影=編集部)