上尾vs大田原
上尾ベンチ
更に高みを目指す上尾
第3試合は上尾と大田原の対決。
上尾は70年~80年代の埼玉を引っ張る存在だったが、浦和学院といった私学高校の台頭に押さえて低迷気味だったが、最近は復活の兆しが見えており08年の記念大会で決勝に進出。
そして鷲宮高校で実績を挙げた上尾高校出身の高野監督が就任。
今春は24年ぶりの関東大会進出を決めた。
一方、大田原は52年ぶり関東大会出場。
今春の21世紀枠の出場候補に挙がっている伝統校である。
オールドファンにとって胸躍る一戦となった試合は上尾が仕掛ける。
1回の裏、上尾は1番佐藤が左中間を破る二塁打で出塁し、ワンアウト三塁から3番勝木田のライト超えの三塁打で1点を先制する。4番小島のスクイズで1点を追加。4番打者のスクイズを決めたが、高野監督にとっては得点を取るためならば打順関係なくバントをさせる。手堅い攻めで1点を追加。
3回の表、大田原は2番大金のタイムリーで1点を返し、2対1になる。1点を争う好ゲームになる予感をさせたが、5回の裏で崩れる。あっさりとツーアウトに打ち取った大田原。だが1番佐藤のショートゴロをエラーし、出塁させてしまう。上尾にとってはチャンス。
上尾は2番荒井もつないで二死1,2塁にして先制打を打っている勝木田。甘く入ったストレートを捉えセンター超えの二塁打で一気に二者生還し、4対1。
そして小島のタイムリーで1点を追加し5対1とする。
6回にはバント野球を発揮。二者連続スクイズで2点を追加し、7対1に。
上尾の先発・伊藤が粘り強い投球を見せて完投。上尾が二回戦進出を決めた。
渡辺大(大田原)
高野監督は
「相手が追うところで突き放す展開に持っていったことは大きいですね。相手の失策から3点を取ったのは大きくダメージを与える得点の仕方ができたと思います」
とこの試合の試合運びを評価した。
しかしそれでも満足しない。
「勝てたとはいえ、まだ課題が残る部分が見られましたし、この野球のまま夏に入ったら、とても勝てない」と
手厳しかった。
しかし実力だけでは測れない夏。
夏の甲子園出場へ向けて多くの学校が追い込んだ練習を行っているだけにより一層、手堅い野球が問われてくる。
鷲宮高校からカバーリング・全力疾走を徹底としてきた高野監督。今でも多くの選手が全力で走ってカバーとバックアップを行っている。鷲宮高校で築き上げてきた徹底としたカバーリングは息づいているように感じた。
でもまだ足らない。
更なる高みを目指し、この関東大会は多くのことを得るつもりだ。
伊藤 康介(上尾)
先発した上尾・伊藤 康介(171センチ71キロ)。
左スリークォーターから投げ込むストレートのスピードは130キロ前後。力の入れ加減を行い、要所でビシッと攻めるストレートで三振を奪う。
速球の威力には中々のものが感じられる。変化球はスライダー、スクリュー。多投せずにここぞという場面で投げて空振り三振を狙う投球を見せていた。
中々まとまった投手であると思っていたが、実はこの伊藤。2年秋から肩、腰の故障に苦しんでいた。ようやく投げられるまでに復調したが、故障によって丁寧な投球をせざるを得なかったのだ。いままで短いイニングしか投げられなかっただけに完投できたのは大きな経験になっただろう。
エース三宅と共に二枚看板として活躍できることが夏を戦うための最低条件になるだろう。
3番勝木田 航(173センチ73キロ 左/左)は先制打・中押し打を見せる活躍。
どっしりとした構えから振りぬく打球の速さは光るものが感じられる。この選手は強引に手を出す癖があった。
高野監督は「狙い球をしっかりと絞れ」と指示。
甘く入ったストレートをしっかりと捉えていった。打撃力は高いものがあり、夏に向けて活躍が楽しみな選手。
大田原の鈴木亮平(174センチ74キロ 左投げ左打ち)はミートセンスが光る好打者。
やや頭が突っ込んで打ちに行く傾向があるが、しっかりとボールを捉えることができている。
外野守備はポジショニングが良いのが特徴的。抜けたと思われた打球を正面に入って捕球している。地肩の強さは平均的でフォームを乱してコントロールを乱すことがあるので、スローイングの精度を高めることが課題か。とはいえ魅力のある面白い選手だ。
(文=編集部:河嶋宗一)