立命館宇治vs京都外大西
立命館宇治 土肥純平(1番ショート)
2番手・森悠馬(3年)に対しても同様の策を取る立命館宇治。1番土肥純平(3年)のタイムリー、3番松井悠真(2年)の犠牲フライ、そして打者一巡して古川の二塁打でビッグイニングとした立命館宇治。
「エースの佐藤優太(3年)、右の松岡潤樹(2年)に次ぐ投手を」と語った京都外大西・上羽功晃監督の構想はこの時点で崩れてしまった。
一方、「この一週間こういう練習をしてきた」と話した立命館宇治・卯滝逸夫監督。
勝ち越し打を放った福本は、「自分が守りの立場だったら(こういう攻撃は)嫌ですね」と話してくれた。
〝相手に球数を投げさせて、気持ちを疲弊させていく〝
この日の京都外大西のように公式戦経験の少ない投手や制球が心もとない投手なら効果的な策だ。
立命館宇治 福本拓也投手
実は1回表に、京都外大西も似たような状況を作っている。立命館宇治の福本に対して29球を投げさせたのだ。「スライダーを見極められてしまった」と1回を振り返った福本と卯滝監督。
京都外大西は1番の下村瞬(3年)こそ初球で倒れたが、2番石山励雄と3番前田滉平が6球、4番中村陵と5番佐々木建介(いずれも3年)が5球、そして6番八木尾が6球と、スライダーを見極めて福本に球数を投げさせた。
だが福本はこのイニングを1点で凌ぎきった。
福本は、昨秋敗れた福知山成美戦(2010年9月25日)で1回に四死球連発で3点を失ったようにウイークポイントだった立ち上がり。
だからこそ、「1点で踏みとどまったのは大きい」と卯滝監督と福本は語った。一歩ずつ成長の跡を見せる福本に一日の長があった。
これが結果的に試合の大きなポイントになっている。
2回以降も福本に数を投げさせることを徹底した京都外大西だが、大量失点が影響したのか得点しきれない。結局、福本は最終的に120球を投じることとなった。
立命館宇治打線が稼いだ155球を加えたこの試合の総投球数は275球にのぼる。7回コールドで試合が終わったことを考えるとこの数はやはり多い。
暑さが投手の体力を奪うのが夏。この275球という数字を夏に置きかえると、投手の疲労、精神的負担はさらに増すことだろう。
こういった戦い方も公式戦でなければ中々、身につかないと言える。
最後にコールドとなった7回の攻防にも触れておく。
7点差で迎えた7回表。京都外大西は2死から2番石山が左中間を破る三塁打を放った。続く3番前田はセカンドゴロ。しかし、セカンドの田中大也(1年)が痛恨の失策を犯して京都外大西に1点が入った。
「2アウトになって抑えてやろうと力んでしまった」と三塁打を悔やんだ福本。
一方、「意地を見せて1点を返せたのは大きな収穫」と話した上羽監督。
7回表の1点。この日は点差があってのものだが、1点差ゲームの9回ならと仮定すると同点に追いついたことになる。9回、最後の3アウト目を取るまで野球はわからない。
その意味ではこの7回表に入った『1』はものすごく大きい。タイムリー失策をしてしまった田中大也はまだ1年生。この苦い経験を次に生かしてほしい。
(文=松倉雄太)