試合レポート

中京vs土岐商

2011.04.18

中京vs土岐商 | 高校野球ドットコム

宮地翔太(中京)

宮地(中京)13回完投 スカウトの前で成長示す

昨年5月に中京の指揮官に就任した柴田秀仁監督は、かつて社会人野球「一光」(07年廃部)でプレーしていた大型捕手だ。日本選手権で大会優秀選手に輝いたこともあり、アマチュア球界でのキャリアはピカイチである。そんな柴田監督が「現役時代、お世話になっていた方ばかりです」と恐縮するプロ野球スカウト陣がこの試合、ネット裏に多数陣取る。お目当ては、その柴田監督が教える中京のエース・宮地翔太だ。

ひと冬越えて、宮地がかなり良くなった。まずは体つき。昨秋は何となく太めの残りの感があったが、それが取れて、程よい筋肉量となっている。マウンド上での姿や身のこなしが別人のようだ。「自分から走り込むなど、自覚が出て取り組みが変わってきました」と柴田監督が話すように、意識の変化がそうさせたのだろう。投球フォームも、角度の高さは保ったままで、課題だった立ち投げ傾向が随分と解消された。腕の振りも、以前に比べてスムーズになっている。

成長を裏付けるように、宮地のパフォーマンスがこの試合で光った。立ち上がりこそ感覚がつかめずに失点したが、中盤から持ち直し、終盤でもストレートは常時130キロ台後半を維持。延長戦に入ってからは安打を許さなかった。また延長13回表には左中間へ一発を放ち、自らのバットで試合を決めた。

中京は控え選手も活躍した。ケガで戦列を離れている吉川尚輝に代わり、伊藤大喜が遊撃に入り、台頭している。4回表には何気ないスイングから左翼席へ3ランホームランを放ち、次打席での二塁打を含めて3安打。ショート周辺の打球処理も素晴らしく、2年生とは思えないプレーぶりを披露した。柴田監督も「彼にとって初めての大きな大会なので、下位の打順で使っていますが、練習試合では2番を打たせたりもしています。練習試合での打率はチームでも上位です」と、若い力の伸びを喜ぶ。またこの日5番打者に入った背番号19の葛西郁斗も、複数安打で得点に絡む活躍を見せた。


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矢田純規(土岐商)

試合を振り返って柴田監督は「バッティングの自信をつけることをテーマに、どんどん打っていこうと指示した。初めての大会となる選手も多く緊張したと思いますが、勝ったので入りとしてはオーケーでしょう」とまずまずの手応えを感じている様子だ。昨年の今頃は、部の不祥事で対外試合禁止処分中だった中京。中京学院大でコーチをしていた柴田監督が、不祥事発覚後に母校の指揮官に就任した。「メリハリをつけた野球部にしたい」と話す監督のもとで、選手たちも伸び伸びとプレーしているように見えた。

◇ ◇ ◇

敗れた土岐商だって、昨夏の甲子園出場校。宮地擁する中京と、甲子園出場左腕・矢田純規が残る土岐商の顔合わせは、そのまま今夏の決勝戦に持ってきても違和感のないカードだ。

矢田はこの冬、「消耗しないピッチング」(工藤昌義監督)に取り組んだそうで、投球全体が大人びてきた。右打者の外角へのコントロールも向上し、スライダーを内外に投げ分け、打者に本来のバッティングをさせなかった。それだけに、ホームラン2本で5失点したのが無念。

工藤監督は「追いこんでからの被本塁打や、9番打者に本塁打を浴びるなどで、一度に複数点取られるというのは、本人も想定していなかったはず。今後はもう少し一発に気をつけるようになるだろう」と、敗戦から学ばせる構えだ。

チームは9回裏に代打・小西優臣の二死からのセーフティスクイズで同点に追いつくなど、今年も生きのいいひたむきな野球は健在である。

(文=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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