呉宮原vs福山商
本塁打を放った角原(呉宮原)
キッカケ
まさに怒涛の攻撃だった-。
4回、呉宮原は5番・角原勝士の中前安打を皮切りに6番・三枝冬馬の右前安打、7番・鳥越雅大と8番・福岡佑輔の連続適時二塁打など長短打に犠打を絡め、一挙に8点を奪った。この試合、呉宮原が放った9安打のうち、この回だけで7安打というだから、いかにこの回の集中打が凄かったのかがわかるだろう。
中でも光ったのが、5番・角原だ。この4回の攻撃、打順が一巡し、二度目に回ってきた打席でのことだ。
福山商の左腕・笠原真也が投じたインコース高めのストレートをコンパクトに振り抜くと、ものの見事にジャストミート。打球はあっという間にライトスタンド中段に突き刺さった。
「みんなが繋いでくれたチャンスなので、三塁ランナーを返すことだけを考えていた」という角原だが、その打球に自分でもビックリしたという高校初本塁打となった。
そんな好調な呉宮原の打撃陣には、ある“キッカケ”があった。
今大会に入る前、先週行われた練習試合でのことである。
倉敷工(岡山)とのダブルヘッダー第一試合で好右腕・守屋功輝に完封されてからのことだ。
この悔しさを“キッカケ”に第二試合では郷原優太、岡川武和が本塁打を放つなど打ち勝つと、続く練習試合で姫路工(兵庫)や今治西(愛媛)といった強豪校を次々と撃破したのだ。
「郷原や岡川が打って、自分も負けたくないと刺激になった」
そう角原が話すようにチーム全体の雰囲気も上昇気流に乗ってきたかのような出来事であった。
もちろん、そんな結果が出てきたのも冬場にしっかりとトレーニングを積み重ねてきたことがあったからだろう。
試合後、「選手の気持ちは充実しています」と話してくれた呉宮原の平崎直樹監督。
インタビューを終え、次のインタビューの角原とのすれ違う際にこう声を掛けていたのが聞こえてきた。
「いいバッティングだったな」
心から選手を称える想い、それがあるから“キッカケ”も生まれたに違いない。
(文=編集部:PNアストロ)