柏の葉vs野田中央
矢部君(柏の葉)
柏の葉、思い切った継投が成功で初の県大会進出
170校以上の参加校がある千葉県だが、春秋の県大会に進出できるのは、その3分の1以下しかない。
そういう意味では、中堅校にとっては、県大会進出できるかどうかというのは、非常に大きな意味がある。
また、それが当面の目標ということにもなる。そんな両校の対戦だったが、その目標に向かって、現状の中で持てる力を出し合った戦いになったといっていいだろう。
結果的には、選手層にやや分がある柏の葉が後半になって、野田中央の深井君を攻略して、柏西から新校の柏の葉となって、初めての県大会出場を決めた。
先制したのは野田中央で4回、1死満塁からスクイズ失敗で好機を逸しかかったところで、暴投が出るというラッキーなものだった。しかし、すぐ次の5回に柏の葉が1死三塁から暴投で追いつき、さらに高久君の安打と死球に本多君の三塁打で逆転。本多君もこの回二つ目のバッテリーエラーで生還。柏の葉が3点リードした。
ところがその裏、野田中央は正捕手がこの日、半月盤の手術ということで代役出場となっていた稲葉君が「えいやっ!」という気持で振った一打が左翼越え3ランとなって追いついた。これで試合は振り出しに戻って、5回が終わってグラウンド整備となった。
そして再開早々の6回、この回先頭の池田君がいきなり左翼へソロホーマー。再び柏の葉が突き放した。
さらに、7回にも、宮田君の絶妙のバント安打から好機を作り、1死二三塁から五番松本君のやや幸運な右前適時打で2点を追加。再び試合の主導権を握った。
その裏の守りでは、2死一塁で稲葉君を迎えたところで、吉住昌一監督は、スパッと池田君から右下手投げの野中君をリリーフに送ったがこれが成功した。8回には、お互いが点を取り合ったものの、最終的に柏の葉が逃げ切った。
深井君(野田中央)
試合後、部長も兼任している野田中央の阿部宙監督は、ベンチを出る選手たちに、「負けてからが大事なんだ。きちんと整備しておきなさい」と指示を与えながらも、「近い目標として、県大会出場というのはあるのですが、それに出られるのと出られないのとでは全然意識が違ってきます」と、残念がっていた。
それでも、この日に代役捕手として出場し本塁打も放った稲葉君に関しては、「中学時代から、試合ではほとんど活躍したことのない子だと思うんです。それが、こういう試合で打てたことが自信になってくれればいいのですが」と、暖かく見つめていた。
継投がずばりと当たった形の柏の葉だったが、吉住監督は、
「継投は、もう少し前からとも考えていたのですが、池田が本塁打打ちましたから少し引っ張りました。合わされてきたなと感じていたので判断したのですが、上手くハマりました。県大会に出られることは、経験値ということからいっても、(県大会に出ないのとは)選手たちの意識としても、まったく違います。やはり出られる意味は大きいですね」と、初の県大会進出を素直に喜んでいた。
(文=手束 仁)