秀岳館vs済々黌
圧巻弾を放った背番号3の寺尾(秀岳館)
春の嵐
昨秋の熊本大会覇者・秀岳館と熊本で唯一の全国制覇(’58年センバツ)経験のある済々黌。
私学の強豪校と公立の伝統校という1回戦屈指の好カード。
走攻守バランスの取れた第1シード秀岳館に対して、済々黌が伝統の足技を絡めた攻撃をいかに発揮できるか。それが一つの焦点となった。
その済々黌は初回から足技を絡めて果敢に攻めた。
トップの西昭太朗が、いきなり三塁線への二塁打を放つと2番・松永薫平が送る間に西が一気に三塁を狙うがアウトとなる。しかし、その松永がすかさず二盗。4番・浦本欣央の左前適時打で松永が返り、まず済々黌が1点を先制した。
するとその裏、秀岳館は1番・玉本健太、2番・橋本勇哉がともにクリーンヒットで出塁し、5番・但馬の犠飛で1点を返し、いきなり初回から試合が動いた。
しかし、2回、3回と互いに得点できず、重苦しい空気が漂う中、そのまま試合が進んでいくかと思えた。
そんな矢先、その空気を一掃するある出来事があった。
4回表だった-。
秀岳館、7番・寺尾有史の打席。
突然、何かを予感するかのようにセンターのスコアボード上の旗が大きくなびき、[stadium]山鹿市民球場[/stadium]周辺の木々も騒がしく動き始めた。
済々黌ベンチやスタンド、選手同士からも「風がでてきたぞ」と大きな声が飛び交う。
だが、打席に立つ新2年生・寺尾はそんな風にびくともしない。
真ん中に入ってきたストレートをジャストミート。
打った瞬間入ったとわかる強烈な打球は、あっという間に98メートルの左翼スタンドの中段に突き刺さった。
追い風があるとはいえ、その打球は「風なんて関係ない」とでもいうような圧巻弾であった。
しかし、打った本人は至って謙虚である。
「2ストライクまで追い込まれていたので、三振をしないようにと思っていました」(寺尾)
大振りしなくてもあそこまで運べる能力があるというのだから、これまたは驚きだ。
秀岳館ナイン