牛深vs熊本二
中村忠義と中村俊貴(牛深)
9回2死からの奇跡
1回戦、第三試合-。
阪神甲子園球場で、ちょうど地元・九州学院が試合をしている頃、熊本の[stadium]山鹿市民球場[/stadium]では牛深vs第二の試合が行われていた。
牛深のバッテリーは新2年生の中村忠義と中村俊貴。
二人は双子の兄弟で、兄・俊貴がキャッチャーで、弟・忠義がピッチャー。
身長は165センチと同じで、体重も60キロ前後とほぼ同じ。
牛深東中学でもバッテリーであったようにこの試合も二人の息はぴったりであった。
牛深は3回に2点先制するも4回に逆転を許し、最終回を迎えた。
1アウト、2アウト・・・そしてついに9回2死という場面を迎えた。
そんな場面で打席に立ったのは、双子の弟である2番・中村忠。
4番の兄・俊貴は打席に向かう弟・忠義にこういった。
「絶対返すからまわせ」
その言葉を胸に弟・忠義は執念でバットを振った。打球は遊撃手へ転がり、懸命に走った忠義は内野安打となった。一塁ベース上では「頼むぞ」といった思いが聞こえてくるようだった。
中村忠義(牛深)
その思いが伝わったのか。続く3番・五通公貴が相手失策で出塁すると、ついに4番の兄・俊貴にまわってきた。
「インコースにくる」
兄・俊貴は、さすがキャッチャーだけあって相手の配球を完璧に読んだ。
思い切って振り抜いた打球はレフトの頭を越え、二人の走者がホームへ返ってきた。逆転だ。
9回2死から双子の思い、そして牛深ナインの思いが、奇跡の逆転劇を生んだ。
弟・忠義が出塁して、兄・俊貴が返す。
バッテリーとしてだけではなく、ここでも「負けないぞ」という気持ちまでも二人は息ぴったりだった。
その裏、同点に追い付かれた牛深だが、10回に勝ち越し、そのまま逃げ切り二回戦進出を決めた。
熊本県民が甲子園の九州学院に釘付けになっていた同じ時間帯、[stadium]山鹿市民球場[/stadium]でひっそりと行われていたこの試合。
しかし、それは甲子園にも負けないくらい、素晴らしい試合であった。
(文=PNアストロ)