大垣日大vs愛工大名電
葛西(大垣日大)
大垣日大(岐阜)2年連続春の聖地へ。エース葛西をナインが投打で守り立てる
「勝てばセンバツ出場当確」となる準決勝。大垣日大が猛打で愛工大名電を下し、2年連続センバツ甲子園出場を確実にした。
昨春もセンバツのマウンドで躍動した大垣日大エース・葛西侑也の調子が、今ひとつ上がってこない。2週間前の松商学園との練習試合では球の走りも良く、調整万全かと思われたが、先週の2回戦・豊田西戦は不本意な出来。この試合も初回、愛工大名電の先頭・村山賢輔に死球を与えると、2つの犠打(うち1つは内野安打に)で走者を進められ、4番大村侑大に犠飛を浴び、先制を許した。
次の回(2回表)も、先頭の6番清岡伸次に足元を破られ、またもノーアウトのランナーを出した。愛工大名電は、センバツを制した数年前の頃を想起させるくらい、執拗なバント攻撃を仕掛けてくる。
それでも、大垣日大は守った。
「足の速い選手にバントをライン上に転がされて嫌だったが、星野がうまくカバーしてくれた」
と葛西が胸をなで下ろしたように、続く7番佐藤大将、8番冨沢一晃の三塁前への送りバントを、いずれも三塁手星野真一郎が好フィールディングで二塁封殺。このプレーが葛西に与えた好影響は大きく、結果的に3回表から立ち直ることができた。
「ブルペンで調子が良かったので、最初は力が入ってしまったが、自分の故郷(葛西は三重県出身)でいいところを見せられたと思います」と話した葛西。「夏に県立岐阜商に1点差で負けて悔しい思いをしたので、それを胸に練習をしっかりやってきた。自分たちの代(最上級学年)でセンバツに行けて嬉しいです」と胸を張った。
思えば1年前も、当時1年生の葛西が好投してセンバツ出場を決めたが、当時に比べてインタビューの受け答えなどが随分と立派になった。前にも増して、はっきりとした口調で堂々と答える。この1年で、精神的にもかなり成長してきたのが分かる。
本塁打を放った高田(大垣日大)
打線も火を噴いた。
「相手ピッチャーがアウトステップしていて、右打者の外角(=左打者の内角)には投げられないはず。狙いを絞らせて、右打者にはショートの頭上をめがけて打たせた」と阪口慶三監督が分析し、選手たちも指示通りに打った。右打者の高田直宏、上木健晴は、いずれも左方向へホームランを運んでいる。
また、4回裏には一度スクイズを失敗した打者に再度スクイズを指示して追加点をもぎ取ったほか、5回裏には無死一塁から、2番後藤健太がエンドランのサインに応えて中越え二塁打を放ち、一気に走者を還した。ホームランあり、スクイズあり、エンドランありの多彩な攻撃に、阪口監督も「100点満点の試合です」とご満悦。
「昨年より強いチームになった。
選手には厳しいことも言ってきたが、こうして結果が出たからね。秋季東海大会連覇を目標に出来るのは、ウチだけだ。これを逃す手はない。明日の決勝も勝ちにこだわって、死に物狂いでいきます」
と、チームにまた鞭を入れた。
対する愛工大名電は、先発の浜田達郎が序盤の出来を維持して好投するかに思われたが、大垣日大の強力打線を止めることができなかった。また守備では、フォースアウトを焦っての送球ミスが散見されるなど、無念のコールド負けを喫した。攻撃はバントを多用し揺さぶりをかけたが、後半に立ち直った相手エース葛西の低目を突く投球の前に、1点のみに抑えられた。
(文=尾関 雄一朗)