土佐vs高知商
三谷啓介投手(土佐2年)
「傷だらけの栄光」。土佐、6年ぶり秋季四国大会出場権獲得!
来春のセンバツにつながる秋季四国大会出場権をかけた3位決定戦。
しかし、両チームとも先発メンバーに背番号「1」の姿はなかった。
土佐のエースナンバーを背負う左腕・三谷啓介(2年)は、前日の準決勝・高知戦で左足首に打球を受け降板。
「足首の腫れは前夜には引いたのでメンバー提出直前まで先発は迷った」高多倫正監督だが、最終的には同じ2年生左腕・森岡稜介に先発マウンドを託すことになったからだ。
とはいえ一方の高知商も満身創痍の状況は土佐と同じ。
腰痛を抱える背番号「1」右腕・髙橋一成(2年)は、準決勝・明徳義塾戦で2番手として今大会初登板も、3回で2失点と本調子でないのは明らか。先発を谷岡勇進(2年)に譲った高橋一はブルペンで調整を進めながら出番を待つことになったのである。
しかし試合は両チームの投手陣が踏ん張りを見せたことで白熱の投手戦となる。ちょうど一年前は1年生エースとしてチームの屋台骨を支えながら、その後は左ひじ、左肩の故障が続いていた土佐・森岡稜は「低めに丁寧に投げる」持ち前のピッチングで、7回3分の1を2失点に抑える好投。
「森岡もいい投手なので、任せようと思った」三谷も満を辞してのリリーフでサヨナラのピンチを要所でしのげば、高知商も谷岡を3回途中からリリーフした高橋一が4回3分の1を無失点のナイスピッチ。8回以降3番手としてマウンドに立った吉名祥(2年)も、気迫がボールに伝わる力投で土佐に決勝点を許さなかった。
校歌斉唱を見つめる土佐・高多倫正監督
そして試合時間も3時間を過ぎ、再試合も観客の頭をかすめるようになった延長14回、ついにスコアが動いた。
先頭打者・三谷の安打をきっかけに犠打、安打、盗塁を絡めた1死2・3塁から暴投で勝ち越した土佐は、さらに失策と5番・生田優人(2年)のタイムリーで3点を勝ち越し。
その裏の高知商の反撃を3人で退けた三谷が左腕を突き上げたとき、205分の死闘は終わりを告げたのであった。
この勝利により、実に6年ぶり14度目となる秋季四国大会出場を決めた土佐。
「これまで悔しい思いをしてきた先輩の分も勝てたので嬉しい」と自身も最後に足をつって交代を強いられた山形篤史主将も語った。
「傷だらけの栄光」は、戦後まもなくの四国高校野球を牽引し、近未来の復活を期す古豪にとっても大きなエポックメイキングとなることだろう。
(文=寺下 友徳)