高知vs明徳義塾
優勝旗を持った山崎隼司主将を先頭にダイヤモンド1周の高知ナイン
ハイレベルな攻防戦は、高知の秋季3連覇で決着!
既に6年連続28度目の秋季四国大会出場を決めている高知と、5年連続22度目となる同大会出場を決めている明徳義塾による5年連続の高知県秋季高校野球頂上対決。
夏の甲子園を終えた明徳義塾の調整不足により、15対1のスコアで高知が快勝を収めた8月末の第54回高知県高等学校野球選抜大会(県新人大会)決勝に続くガチンコ対決は、観客の期待に違わぬ好ゲームとなった。
前半戦の主役は明徳義塾先発左腕の尾松義生(2年)。
ストレートこそ131キロが最速ながら、タイミングを外すカーブ、ストライクゾーンからボールゾーンへと微妙に流れるスライダーの切れが素晴らしく、6回を終えて打者18人から7奪三振を含む無安打無四球無失点。
同じく6回まで2安打無四球無失点の高知左腕・宮本嘉生(2年)の好投がかすむほどの正に完璧な投球であった。
しかし「低めは捨てて高めを全部振っていけ」と島田達二監督から指示を受けた高知打線は残り3イニングから大爆発を起こす。
7回表・2番の曽我部雅仁が尾松の82級目をレフトへ弾き返して完全試合を阻止すると、1死から4番・松窪海斗が高めに入ったカーブを迷わず叩いてレフトオーバーとなる先制のタイムリー3塁打を放つ。
ちなににこの一連のプレーでは、レフトの北川倫太郎(2年)がフェンスに激突し、3塁塁審が北川の状態に気を取られたことから、審判団が松窪の3塁突入を明確に判定できるポジショニングを逸するミスも。
一時スタンドは騒然とした雰囲気となったが、相手の動揺を見逃さずこの7回に一挙4点、8回にも3番・亀井雅人(2年)のセンターオーバー2塁打で2点を追加した高知の試合運びの旨さは、そんなアクシデントを差し引いても3年連続17度目となる秋季高知大会制覇以上の価値を見出せるものであった。
宮本嘉生投手(高知2年)
とはいえ、明徳義塾も8回裏は最後、相手レフトのダイビングキャッチ判定の前に無得点に終わったが、2死満塁まで宮本を攻め立て、9回には3安打を集中させ1得点と粘りは存分に発揮。
「明徳義塾の選手なら取ってほしかった」と、馬淵史郎監督は7回の先制点を許した場面について敢えて苦言を呈したが、ことこの試合にかんしていえば、「紙一重」という高知・島田監督の言が一番正しい評価だろう。
こうしてライバル対決は高知の2連勝に終わったが、「他県のチームは全く恐ろしくない」と敗れた明徳義塾・馬淵監督も明言したように、この日、守備における球際の強さ、1球への執念など、高知、明徳義塾が示したハイレベルの攻防戦は全国に出してもそん色ないもの。
この決勝戦を最低ラインとして両校がさらなるレベルアップを図ることができれば、今季3度目の対戦がレクザムスタジアムでの秋季四国大会決勝戦となることは、現時点で全く疑問を挟む余地がない。
(文=寺下 友徳)