試合レポート

藤蔭vs大分

2010.10.06

2010年10月05日 新大分球場  

藤蔭vs大分

2010年秋の大会 秋季大分県大会 決勝

一覧へ戻る

試合に集中する藤蔭ナイン

新生・藤蔭の第一歩

 藤蔭がシーソーのように揺れ続けた試合を制し、13季ぶり3回目の優勝を飾った。
春夏計2度の甲子園出場を数える大分県私学の雄。
昨春に就任した原秀登監督にとっては、わずか1年半で九州へと到達したことになる。

「藤蔭が変わった」

という声は、昨年来よく耳にはする。
私生活、学校生活。大会期間中、球場内外ですれ違う際に見せる振る舞い、姿勢。
とくに挨拶については、腹監督の就任とともに大分県をリードする存在にまでなったといっても言い過ぎではない。

主将の城向孝明は「礼儀を守る。挨拶をしっかりとする。これを守り続けてきたことが、こうして結果に結びついたことが嬉しいです」と、ニコリともせずに優勝インタビューに応えた。

精神面の鍛錬といえば「魂・知・和」野球で今年の春夏を制した興南。やはり全国屈指の強豪をモデルに、チームをまとめているのだろうか?

「もっと身近なところにも、見習うべきチームはあります。たとえば竹田の選手はひとり残らず全力疾走しているし、5回終了のグラウンド整備でも、もの凄いダッシュでキビキビと動いていました。こういう部分を自分たちも真似るようになりました」
九州大会に向けても「礼儀・全力・心」で頑張る、と城向が言い切った。


原監督(藤蔭)

90年夏に藤蔭が甲子園初出場を果たした際に、主将を務め開会式で選手宣誓を行なっている原監督。
就任1年半で県を制した最大の勝因を「我慢ができたから」だと見ている。

原監督は就任と同時に「まずは挨拶をしっかりしよう。『チワ』ではなく『コンニチハ』とハッキリ言おう。当たり前のことが当たり前にできる大人になる為に、私生活から見直そう。日頃の態度は野球にも表れるのだから」と、チームを一から作り直す決意を宣言した。

「子供たちのノビシロって、技術的点より精神的点にこそあると思うんです」という原監督は週に数日、寮で選手たちと同じ釜の飯を食う。
部長、副部長を含めて、私生活をきめ細かく指導しながら、選手たちの心境の変化や真意などを読み取っている。

 一方、プレーの面では「送りバントをきっちりと決めよう。バント処理をしっかりとしよう。ファインプレーはいらないのだから」という方針を徹底してきた。
これも原監督が日常生活から我慢強く言い続けている「当たり前のことを当たり前にこなせるように」と見事に符合するのである。

その結果、選手たちは“耐えることのできる人間”に成長し、明豊戦での逆転劇、決勝での振り切り劇を演ずるまでになったのだと原監督。 我慢の勝利である。

「この優勝で“野球だけやっていてはダメなんだ”ということが、あらためて分かったはず」(原監督)

春夏連覇の興南をはじめ、全国クラスの名だたる強豪が集う九州大会。
藤蔭にとっては、モデルケースとなりうるスタイルを持ったチームも多い。
原監督の方向性が間違っていなかったことは、今回の大分県制覇で実証した。
また、センバツを賭けた九州大会で得られる経験値が、若いチームにとってこれ以上ないカンフル剤にもなるだろう。

 新生藤蔭は今年よりも来年、さらに再来年と、まだまだ強くなっていく。

(文=加来 慶祐

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.05.05

【関東】常総学院、花咲徳栄などが関東大会進出!5日の山梨準決勝で出場校がすべて決定!

2024.05.05

【春季埼玉県大会】花咲徳栄9回一挙5得点!山村学園のプロ注目左腕・西川を攻略し逆転で関東大会へ!

2024.05.05

【岩手】花巻東が第1代表掴む!大船渡、盛岡中央などが敗者復活戦で代表<春季地区予選>

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.04.30

大阪大などに卒業生を輩出する進学校・三国丘  文武両道を地で行く公立校は打倒・強豪私学へ「何かしてやりたい」

2024.04.30

【岩手】宮古、高田、久慈、久慈東が県大会出場へ<春季地区予選>

2024.05.01

【神奈川】関東大会の切符を得る2校は?向上は10年ぶり、武相は40年ぶりの出場狙う!横浜は6年ぶり、東海大相模は3年ぶりと意外にも遠ざかっていた春決勝へ!

2024.04.30

【山口】宇部鴻城が西京を下して7年ぶり優勝!<春季大会決勝>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>