松阪vs白子
阪口(松阪)
松阪、「集中」実って31年振り秋季東海大会切符!
秋季三重大会は3日、四日市市営霞ヶ浦球場で準決勝2試合を行い、第1試合では松阪が延長の末に白子を4-3で下して、実に31年振りとなる秋季東海大会への出場権を手にした。
第2試合を制した三重との決勝戦は9日、12時30分から三重県営松阪球場で開催される。
試合後の松阪・松葉健司監督が熱っぽく語る。慌しい試合後の囲み取材で聞くにはちょっともったいないくらい、興味深い理論や実践の話が次々と出てくる。
少し長くなるが、その一部を載せていこう。
「選手には『集中せぇ!』ということを繰り返し言ってきました。集中とは、現実と心が同調することなんです。好きなマンガを読んでいるときは、時間の流れを感じないでしょ。そういう感覚なんです」。
では野球での集中力を身につけるにはどうしたらいいか。
「体で集中を教えてきたんです。例えばこの一週間、練習ではボール回しだけをひたすらやりました。『この練習の効果が、準々決勝や準決勝で必ず立証されるから』って選手に言い聞かせて」。
そして、延長の末に白子を下し、31年振りとなる秋季東海大会進出を決めた。
「選手も少し『集中』が分かってきたのかも。雑念が消えてきました」。
選手の雑念を消す。前夜、松葉監督はある不振の選手に電話をした。「1打席目のカーブを絶対狙え!全部三振しても構わないから。今までの試合で打ってるから、いいんだよ」。そんなやりとりを通して、選手は試合で慌てなくなった。いい意味で、選手は淡々とプレーするようになってきた。「ボールがもし逆側にきたらどうしようとか、そんな不安は捨ててしまえ!」
松葉監督は続ける。
「この後、球場で三重×菰野の試合を見ていくんですけど、野球が好きなら、選手はよく野球のことを調べなきゃ。野球を理解していたら、試合での怖さ・不安が減る。野球をよく知らないのに『野球が好きだ』と口で言ってたってダメ。それは住所も名前も知らない女の子と付き合うのと一緒だよって(選手に言います)」。
松葉監督は、2002年に久居農林を初の甲子園に導いた、県内では評判の指導者。06年に松阪に異動し、まとまりのあるチームを作り上げてきた。
中川(松阪)
松阪は3回裏からマウンドに上がった中川幸二が、気持ちの入ったピッチングを展開した。
スライダーとストレートを中心に組み立てて5回裏以降は点を与えず、延長10回裏の無死満塁のピンチも中飛と併殺で乗り切った。
打線は平田翔吾が6回表に本塁打。同点に追いついた9回表はツキもあった。
無死一、三塁からスクイズを再三仕掛けるも、失敗して一死に。次打者のサードゴロで併殺、試合終了かと思われたが、相手守備にエラーが出て三塁ランナーが生還した。
延長11回表には1番打者・阪口雄大に勝ち越しタイムリーが飛び出した。
「自分が打ったことより、チームが勝ったことの方が嬉しい。勝てると信じていました」と話す阪口。
夏の大会で、チームは白子に0-3で敗れている。その試合を阪口は応援要員としてスタンドから見ていた。
約2ヵ月後、自らのバットで東海大会進出を決めた。
「東海大会だなんて、今はまだ想像がつきませんが、自分たちがやることをやれば、強豪相手にも互角に渡り合えるはずです」。
ちなみに阪口、殊勲打を放った打席は「無心で打ちました」とのこと。
これが松葉監督の言う、集中した状態、雑念が消えた状態なのだろう。
先月掲載した観戦レポートで筆者は、松阪について「県大会で上位にいけば21世紀枠でセンバツ出場も」と書いたが、とんだ失礼をしてしまったようだ。
県で上位どころか、一戦ごとに力をつけて東海大会へ。
特別枠ではなく通常選考でのセンバツ出場に手が届く範囲まできたが、選手はそんな雑念は捨てて、試合に臨んでくるんだろう。
白子はエース水野啓一朗が試合を作ったが、試合後半の松阪の粘りに屈した。
1年生ながら1番打者で起用されている篠原将哉は、延長10回表からマウンドに上がるなど投打両面でセンスの一端を見せた。
(文=尾関 雄一朗)