鳴門vs阿波西
杉本京太(鳴門)
鳴門、甲子園での経験糧に秋緒戦を制す!
15年ぶり6度目の出場となった夏の甲子園では、8月10日・優勝した興南の前に1回戦敗退に終わった鳴門。スターティングメンバー9人中8人が入れ替わって臨むことになった8月18日の県新人中央Aブロック大会では徳島城東の前に2対7とまさかの初戦敗退に終わった彼らにとって、約1ヶ月の準備期間を経て臨むこの秋季大会は、夏秋連覇という偉業達成以前に自らのプライドを取り戻す絶好の機会である。
その先陣を切ったのは旧チームで唯一甲子園を経験している6番・杉本京太二塁手(1年)であった。初回、4番・惣野親良(2年)の先制タイムリーに続き2死1・2塁から二遊間を破るタイムリーで惣野を迎え入れると、中継プレーが乱れる間にすかさず2塁へ。さらに7番・大端秀志(2年)のショート内野安打で長躯2塁から本塁に突入し4点目を奪取。興南戦後、「下級生でスタメンだったのは僕1人だったので、徳島に戻ってからは全国レベルの高さを徳島に伝えたい」と話した決意の程を、自らの積極的なプレーで体現したのである。
また、鳴門先発の大端も「腕の振りが合っていたので夏の県大会中に変えた」(森脇稔監督)大先輩・潮崎哲也(現:西武ライオンズ1軍投手コーチ)ばりのサイドスローで阿波西打線を翻弄。特に指揮官をして「潮崎より曲がる」と評する左打者へのシンカー系ツーシームは、今後の練習次第で全国で通じる決め球になる可能性を大いに感じさせるものであった。
試合後には「攻撃力と走力は現時点では去年より劣る。その意味では勘違いしないためにも苦しんでよかった」と7回コールドでの初戦突破に気を引き締めた森脇監督。ただし、杉本をはじめ甲子園での苦い経験を糧にしようとする彼らの戦いは、この先におけるのびしろを期待するに値するものであったことも間違いない。
(文=寺下 友徳)