玉名工vs氷川
荒西投手(玉名工)
“チームのため”に進化するエース
梅雨明け宣言された青空のもと、投じた夏の初球はストレート――。
しかも外角低めのコーナーいっぱいに。
“熊本のドクターK”、“火の国の奪三振マシン”などの異名をとるサイドハンドの本格派、玉名工のエース・荒西祐大だ。
先頭打者に対して2球目、3球目も続けてストレートを投げ、3球三振。
しかし、いきなり2番・丸山喬大に三塁手後方に落ちる左前安打を浴びた。
それに全く動じないエースは顔色一つ変えず堂々としたプレート捌きをみせ、3番・河崎泰平も3球三振。
初回こそ、結果的に2つの三振を奪ったが、この日の荒西は違った。
「今日は打たせて取ることを意識しました」。
1球、1球、気持ちを込め、コーナーを丁寧に突いた。打たせて取るピッチングを意識している中にも、やはり持っているモノは違うということがうかがえる。サイドからの常時130キロ後半のストレートは、丁寧に投げているようで“ズバッ”と決まる。しかも、スライダー、カーブ、シンカー・・・
この日、6回を投げ、被安打1、奪三振5、四球1のコールド完封にも全く浮かれず、「制球力がまだまだなんで自己採点は50点です」と苦笑いしたが、その表情からは“まだまだこんなもんじゃいけない”と先を見据えていることがうかがえた。
そして最後に「三振にこだわらず、打たせて取ることを心掛けてチームの勝利に貢献したいです」と玉名工の背番号1は力を込めた。
自分の代名詞である奪三振を捨て“チームのために打たせて取る”その言葉から頼もしさが漂っていた。
試合後、同校の安田健吾監督は「初戦ということで、チーム全体的に堅かったが、荒西を中心に守りからリズムをつくり、確実に1点ずつ積み重ねていけた」。その言葉通り、攻めでは9安打を放つ中にも送りバントなどの犠打を絡めてきた。特に2回、4回、6回は1死からでもバントで送り、2死三塁の場面をつくる手堅い攻めをみせ、結果的にそれがすべて得点につながった。点差は開いても雑にならない玉名工の守りと攻めから“チーム力”が伝わってきた。
“チームのため”に進化するエースを軸に一つになった熊本県立玉名工業。
旋風を巻き起こす、いや聖地への第一歩を踏み出し、夏は始まったばかりだ。
(文=PN アストロ)
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氷川 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||||||
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玉名工 | 5 | 2 | 1 | 1 | 0 | 1X | 10 |
氷川:河崎、上村-上田 玉名工:荒西-八尋
二塁打=谷口正(玉)