「指導ができないのがもったいない」 新天地・海田(広島)でスタートが切れないもどかしい日々
4月も終わり、早くも5月に入った。夏の大会まで残された時間はあと僅かになってきたが、思い切って練習ができるようになるのはいつになるのか。先行きが見えない日々が続いていく。4月から異動で新天地に進んだ先生方はスタートが切れず、もどかしい日々が続いている。
広島の海田に4月から赴任した平崎直樹監督も頭を悩ませる指導者の1人。昨春の県大会でベスト4まで勝ち進んだ実力校・広から母校に戻ってきた平崎監督はこれで4度目の異動。1週間ほど練習を見たが、4月16日から活動を自粛している。
まだ一緒に練習をできた時間は僅か。自粛が再開してから本格的にグラウンドでコミュニケーションをとっていくことになる。ただ、少ない練習時間を通じて、選手たちの真面目さが平崎監督の心に響いていた。
「始業式の日にはすぐ挨拶にきてくれましたし、教えたことをすぐに吸収して練習に取り入れていました。選手たちがすぐに行動に移してくれるので、それだけに指導ができないのはもったいないと感じています」
そこで平崎監督は、選手たちとコミュニケーションをとるべく、Google社が出すアプリ・Classroomを活用。自主練習の内容を週末に報告してもらうことで、現状を把握している。
「ロングティーやバント練習など色んな練習をしてくれていますが、練習をするのにも限界があると思いますので、強制はしていません」
あくまで無理をすることなく、出来る範囲での練習で再開に向けて調整を進めている。5月末まで練習ができないが、グラウンドで話し合うことを平崎監督は大事にしてきた。
「グラウンドでミーティングをするときに、守備の大切さやどうやって失点を防ぐのか。失点に目を向けて、どうやって防いでいくのか。根底に守りがあることを言い続けて、理解してもらってきました」
守備の大切さをグラウンドで伝え続ける。この平崎監督の指導で広は就任して2年6か月で県大会4強などに進んだが、広を離れる際のエピソードを平崎監督が語った。
「3月19日に異動が決まったんですが、活動は自粛中。しかも私を含めた指導者全員が異動になりまして、次に会えるのは4月の始業式でした。それで、『これは直接伝えないと』ということで、選手たちに伝えることにしました」
そこで平崎監督は異動が決まった19日に選手たちへ伝達。呆然とする選手、中には涙を流す選手もいたとのことだが、自分の口で選手たちに伝えた。「広の3年生たちには頑張ってほしい」と今でも気にかけているが、赴任した海田では新たな気持ちで夏の大会を待っている。
「ちょっとでも力になってやりたいですし、練習を重ねていけば考えは変わっていくと思いますので、頑張りたいと思います」
平崎監督の想いを受け取った広、そしてこれから吸収していく海田の躍進に注目だが、まずは野球が出来るようになることを祈るばかりだ。
記事:田中 裕毅
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